労働契約法:最終チェック

2007.12 Whenever天津誌 掲載を一部加筆

皆さまこんにちは。天津創刊号から人材・労務に関するコラムを寄稿する小島です(注:このコラムは2007年12月のものです。当時と現在を比較する参考になればと思います)。

来年1月の「労働契約法」施行まで残り1か月。優先事項を絞って2007年最後のチェックを行いましょう。
なお、試用期間の超過設定や書面で労働契約を締結しない……といった社員の基本的権利を侵害する法律違反がないよう内部統制することは大前提ですので、ここではポイントとして挙げません。

(1)社員に関する社内規定類の総把握を!

一つ目は、「社員に関する社内規定類を、経営者自身が全部把握すること」です。以下のいずれかに該当する場合はとくに注意してください。「えぇーっ?!」という衝撃があるはずです。

  • 現地法人立ち上げ後、自分は二代目以降の赴任者である
  • 合弁企業または合弁から独資化した企業である
  • 総務人事は現地社員に任せてある

一度に全部は無理ですので、まずは就業規則・給与規定・懲戒規定・福利規定など、社員の責務・権利・処遇・福利といった労働契約に直接関連する規定類から優先してください。

私たちがクライアント先にお邪魔して資料を確認する際、こんな会話が飛び交います(経=経営者、私=小島)。


経「来年からは1年以上の労働契約の場合、試用期間って2か月でええの?」
私「大丈夫です」
経「じゃウチは現行のままで大丈夫やね」
私「ええ。でも貴社の現行規定には試用期間3か月と明記してありますよ」
経「うそ……どこどこ?」


他に、「なんでこんな手当や福利費目がウチの規定にあるの? 運用してないやん!」とか「誰がこんなルールを決めたんや。管理がザルになるだろう……」とか「版管理もへったくれもない。重複もあってグチャグチャだな」と経営者が驚くケースも目撃します。

(2)法律に抵触する内容は修正を!

二番目は、「法律法規に抵触する内容の修正」です。皆さんの会社ではこんな実務運用に心当たりがありませんか。

  • 従業員の合意を得て試用期間の上限を法定基準より伸ばして設定している。
  • 従業員の合意を得て試用期間終了時に試用期間を延長することがある。
  • 労働契約は試用期間の終了後に締結している。社会保険も同じく試用期間後に加入手続きしている。
  • 従業員の要望を受けて、社会保険や住宅積立金の加入手続きをせず、その分、現金で従業員に支給している。

これらは、会社と従業員が合意していても法律違反です。注意してください。

(3)不要な内容は削除を!

三番目は、「不要な内容を削除すること」です。実務で運用していない項目、すでに変更・廃止したはずの内容が規定に残っている場合、速やかに修正してください。万一、従業員との間で紛争が発生した場合、規定の内容が優先されてしまいます。

(4)足りない内容の補足を!

最後のポイントが、「足りない内容の補足」です。特に会社の規律確保に必要なルールは細部まで具体的に記載してください。

就業規則は『船乗りの掟』

規律確保に必要なルールは通常、就業規則(またはその細則である懲戒規定)で定めます。ですから、就業規則は『船乗りの掟』でなければなりません。

蒸気船が現れるまで、中世の船は帆船や手漕ぎ船でした。船員全員が定められた役割を本気で果たさないと、漂流・座礁・水と食料が尽きる・・といった船員全員の命に関わる危険がありました。

このため、船乗りには「掟(おきて)」があり、どんな不満や理由があっても、船のルールや上長の命令には絶対服従で、守れない者は荒海に放り出されても文句が言えないとされていました(余談ですが、ストレス発散のため歌だけは自由で、上長の悪口や文句を歌詞にして歌ったそうです)。

船乗りの掟の厳しさは、内容ではなく厳格な適用にあります。内容が厳しくても、違反時の冷徹な処断がなければ海の荒くれ男が真剣に守るはずがありません。

就業規則も会社の掟として厳格に運用することが肝心です。紀律違反の社員に過度の情けをかけて改悛を待つことは、優しさではありません。掟は、船員(社員)を罰するためのものではなく、船員全員の生命と利益を守るためにあるからです。

優しさと甘さを取り違えて紀律違反を看過すると全社の命運に関わります。これまで見てきた組織改革に苦心する現法の多くは、初期の紀律違反時に掟を用いて厳格に対処していれば、深刻な状態を招くことはありませんでした。

違反を看過あるいは規定を曲げて甘く対処した結果、総経理が任期途中で無念の帰国を遂げた、中国市場の開拓が数年以上遅れた、回避できた経済補償や裁判費用で延べ数百万元の費用を浪費した……という例は一つや二つではありません。

ですから、就業規則を見直す際は、『掟』としての運用を想定して、具体性や明確さもチェックしてみてください。

今回の内容をまとめると、「社内規定類をチェックし必要な修正を行う。就業規則は修正を機に掟として運用を厳格化する。」ここまでできれば経営者が2007年内に行うべきことはほぼ完了です。

逆に、社内規定類のチェックは、取引先とのゴルフを部下に任せても、事業計画の策定を延期しても、忘年会をさぼってでも実施しなければなりません。次回新年年1月号では、ここまで終えてすっきりした気分でお会いしましょう。

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