2008年初春:組織づくり三年の計(後)

2008.03 Whenever天津誌 掲載

前回から、春節後に着手する「組織づくり三年の計」について整理しています。中国現法における組織づくりの核心は「成長しようとする社員を邪魔せず、伸ばせる組織にする」ことです。このための今後三年間の取り組みについて、前回は四つのポイントのうち二つまで確認しました。

(3)成長を促す人事制度づくり

人事制度は(1)と(2)を終えてから取り組んだ方がスムーズに成果が出ます。人事制度づくりの狙いは「社員の成長を促すこと」であり、「他の社員の成長を邪魔する社員に船から下りてもらうこと」です。

この狙いに合った制度づくりを行うと、以下のような変化があります。

  • 給与や賞与について総経理に直談判する社員が、ほとんどいなくなる。
  • 優秀な社員が、デキない社員と自分との差ではなく、自身の成長に目を向ける。
  • 会社と方向性の合わない(当社の評価基準では高評価が取れない)社員が自発的に辞める。

人事制度は難しくて専門家しか扱えない、という印象を受けますが、素人でも扱えるようシンプルに取り組むのが◎です。経営という最も高度な仕事をしている経営者が理解できないような制度は、社員たちが制度の目的や内容を理解できず、現地スタッフでの運用も不可能です。

ですから、「人事制度なんてオレ触ったことないよ……」という経営者の方が多いと思いますが、制度づくりは人事担当者や外部コンサルタントに一任せず、経営者自ら取り組むことが成功の絶対条件です。

次に、人事制度の中身を整理すると、仕組みとして構築するのは、「評価(人事考課)制度」、「給与制度」、「昇進昇格制度」、「教育制度」の四つです。この中で、どうしても経営者自らリードしていただきたいのは、評価制度です。

評価とは、「金を払う立場の経営者が求める社員像、認めない社員像」を明らかにすることです。これは、給料をもらう立場の人事担当者や部外者のコンサルタントには逆立ちしてもムリです。経営者以外に、自分の価値基準を表現することはできないのです。そして、給与も昇進も、評価に基づいて決定しますので、評価制度が人事制度の基点であり柱となります。

外部のプロよりも素人の経営者

人事分野の専門家は様々な評価基準を提唱しますが、私は経営者の直観が一番正しいと思っています。経営に全責任を持ち、金を払う立場の人が、間違いなく社員の評価に一番真剣だからです。また、欧米系や日系のコンサルタントがいくら優秀でも、他地域での成功法則が中国で活きるとは限らないことは、皆さん骨身に染みて感じていると思います。

私自身の例で、過去に大手の米国系現地法人から相談を受けたことがあります。この会社は設立から7年経過しており、人事制度の見直しが相談の趣旨でした。以下、HR責任者から聞いた話です。

「当初、米国本社の人事チームとコンサルタントが本社ベースのシステムを導入した。非常に精緻なものだった」
「ただ、7年経って、本社ベースの制度では現地の実情に合わないことが見えてきた。それに、組織や環境の激しい変化にシステムが合わせられない」
問題は、システムが精緻ゆえに誰も修正できないことだ。当時の担当者はすでに離職し、本社主導では現地の実情に合わせたシステム構築は難しい……。」

似た話は日系グローバル企業でもあります。経営者が理解できず、社内で修正できないシステムを導入してはいけません。私は仕事柄、社長が右腕や金庫番を採用する現場に立ち会います。断言しますが、トップの直観は相当に正確です。
(ただ、自分の直観よりも、経験や周囲の意見や書籍の内容を信じてしまい失敗するケースが少なくないのが残念です)

後は、周囲から見えない自身の直観を、どうやって仕組みとして表現するかの問題です。これについては、機会を改めて取り上げたいと思います。

(4)よい人材の獲り方を確立する

(3)と(4)は直結しています。(3)で経営者自ら手がけた評価基準を、そのまま採用基準に応用するのが適切性・簡便性ともに一番です。

  • 何となく不安だったけれど、営業部長が熱心に推すので正採用してしまった社員。
  • 少し引っ掛かったけれど、職位に穴が開いていたので取りあえず採用した管理者。

……心当たりがありませんか。結果はかなりの確率で「ハズレ」だったはずです。採用基準の確立も、評価基準と同様に経営者の専管事項です。採用で妥協したり失敗したりして、後で不良社員の対処に心身を削ることになるのはトップです。入口で労力を惜しまないことが、結局、一番効果的で効率的だと思います。

最後に、今後、採用で成功するために是非とも考慮に加えていただきたい原則をひと言。「スペック重視から人柄重視への基準の大転換」に踏み切ってください。

労働契約法の施行直後ということで、二回にわたり、今後三年間の方針について全体図を広げました。今後、皆さんと意見交換したり、議論を深めたりできればと思います。

2008年からの「組織づくり三年の計」

  1. 中核人材を発掘する
  2. 会社の掟をきっちり運用する
  3. 成長を促す人事制度づくり
  4. よい人材の獲り方を確立する

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