管理者相手の労働紛争が増えています。

2008.04 Whenever天津誌 掲載

2008年に入ってから、労働紛争や紛争予防について相談を受ける機会が目に見えて増えました。特徴的なのは、ワーカーや若輩ではなく、何年か一緒にやってきた管理者相手の話が多いということ。とくに財務や人事の責任者のケースで相談が続いています。

言うまでもなく、お互いに大人の対応をして円満に解決することが一番ですが、やむを得ず紛争に至った場合は躊躇しているわけにいきません。経営者以外に、労働紛争に始末をつけられる人はいません。不利であろうと、情が湧こうと、面倒でイヤになろうと、毅然と戦うしかないのです。

青との戦い赤との戦い

ワーカー相手の紛争の場合、集団でストライキやサボタージュに発展したり、大勢で経営者一人を取り囲んだりしますので、経営者としては正直、肝を冷やします。ただ、根が単純で、デマや勢いで騒ぎになった場合も少なくありませんので、経営者の肝の太さと、腹を割って話す度量が解決の鍵になります。

一方、管理者相手の紛争の場合は、かなり様子が異なります。まず、彼らと紛争に至った場合、経営者は腹を立てていることが多いはずです。「これまで、ずいぶん厚遇してきたつもりだ。今回だって、退職に当たって法律の規定よりも上積みした経済補償金を俺の気持ちとして用意した。なのに後足で砂を掛けるようなマネしやがって……」

この怒りが、実は経営者を深みにはまらせる一因になりがちです。なぜなら、彼らはワーカーや若手社員よりも頭が切れますし、問題処理やネゴの経験も豊富です。地元当局や弁護士など、強力な人脈も持っています。そして、なんと言っても会社の表も裏も知り尽くしています。

ですから、管理者との紛争は、本質的に頭脳戦・心理戦になります。怒って、「円満解消なんかできるか、クビだ!」とか、「もう顔も見たくない!金を余分に出してさっさとケリをつけろ」と短気を起こすと、まず後悔することになります。

いかに冷静さを保ち、法律面の緻密な知識を備え、ミスを犯さないように脇を固めた対応ができるかどうかが解決の鍵になります。いわば、ワーカーたちの場合は、真っ青になりがちな自分との戦い。管理者の場合は、真っ赤に怒りがちな自分との戦いなのです。

具体的な対応方法

では、管理者相手の紛争で、どのように会社の正当な利益を守るのか。覚えておいていただきたいことが二点あります。

  • 発生してからできることは限られる
  • 冷静さを失った方が負ける

実例を挙げましょう。従業員100人規模のオーナー企業です。人事兼会計の責任者であるA課長は、立ち上げ当初から総経理と一緒にやってきた右腕でした。

ところが最近、「副業を始めて勤務中もやってるようだ」「他の社員より遅刻が明らかに多い」「総経理の指示を曲げて労務対応し、現場社員と言い合いが絶えない」といったことが目立つようになりました。注意しても改まるどころか反抗的な態度を取るようになったため、腹立ちを隠さず労働契約の解除を通告しました。

すると、本人の側から、「これは総経理の職責濫用であり、不当解雇である。自分は財務の責任者をやってきたので、会社が会計上、シロと言えない処理を繰り返していたことを知っている」、「自分は良心の呵責に耐えかねて、何度も総経理に忠告した。だが、総経理は忠告を聞き入れるのではなく私のクビを切ろうとしている」と、労働当局に相談が持ち込まれました。

総経理は、かっとなって反論を試みましたが、当局からは本人に譲歩する形での和解を勧められてしまいました。なぜなら、勤怠管理が甘いため遅刻の統計データ(他の社員との比較)が出せず、総経理の注意は口頭警告だけで、記録に残していなかったのです。

さらに、実はこれまでA課長の独断で不正常な会計処理が行われていましたが、本人が先回りして総経理の指示だったと主張してしまいました。総経理は、会計周りの業務をA課長に任せきりだったため、不正常な処理が行われていることさえ知りませんでした。まさに寝耳に水です。直ちに総経理が悪いと決めつけられるわけではありませんが、当局の心証がかなり悪くなることは間違いないでしょう。

……これでは勝ち目がありません。柔道で言えば、掴んで投げようとしたら逆に切り替えされ、受け身も取れないまま畳に叩きつけられたような状態です。

お気づきのように、紛争が発生する前の日常の業務管理で、実は勝負の大勢はついてしまうのです。具体的には、

  • 管理規程・懲戒規程を整備し、
  • 経営者が一任せず業務を管理し、
  • 管理情況を記録に残す。

こういったことを的確に行っていれば、紛争を社外に持ち出すリスクは、かなり低くなります。頭のいい相手ほど勝ち目のない紛争は行いません。

もう一つのポイント、「冷静さを失った方が負ける」も見逃せません。総経理がきわめて冷静で客観的であれば、労働契約の解除通告の前に打てる手がありました。たとえば、信頼している他社の経営者や弁護士・コンサルタント等に相談する。解雇を内心決意してから、就業規則違反や警告の記録を蓄積していく、等です。

脇を固めて冷静に緻密に対応していると、焦れた相手の敵失を誘発します。事前準備が十分でなかった場合も、冷静さだけは失わず「赤との戦い」を進めてください。

管理者との労働紛争に備えて

  1. 管理ルールを明確にする
  2. 一任せず日常管理を行う
  3. 必要なことは記録に残す
  4. 冷静さを失った方が負ける

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