②中国で人材育成に取り組む覚悟

いきなりですが、中国で人材育成に取り組む覚悟をお尋ねします。「総経理、泣いて馬謖を斬れますか?」。言葉を換えます。「能力や人物は愛すべき社員だけど、会社と価値観を共有できない社員に辞めてもらうことができますか?」。

とくに幹部社員、中核人材の育成を本格的に行おうとすると、いつか正面から向かい合うことになる経営者の関門です。
今まさにお悩みの経営者の方には、この辛さが分かるはずです。

経営者の皆さん、ここは逃げてはダメです。中国現法の人材育成においては根底にこの厳しさが必要です。能力や理解の不足は相手が根負けするまで付き合って指導育成していきますが、繰り返し教えても改めようとしない、反発する、冷笑する、面従腹背する、まじめな他の社員を中傷する、ということがあれば、どんなに貢献してきた社員でもきっぱり辞めてもらう覚悟を持っていないと、経営者の本気が社員に伝わらず、社員も本気になりません。

育成の前提: 日本との違い

なんと言ってもお互いの『常識』が違います。とくに製造業の場合、業界や自社特有の『常識』があるため、お互いのギャップを認識していないと不満や反発のもとになります。

例えば、日本では、入社したばかりの社員でも5S(業界により4Sや6S)とは何か知っています。単語を知らなくても意味を聞けばすぐ分かります。育ってきた環境で知らずに学んでいるのです。ところが中国では、煙草の吸い殻を床に捨てたのを注意すると反論が返ってきます。「え?これは清掃担当の仕事でしょ」。

悪いと知ってやっているなら、叱るなり、どやすなり方法がありますが、彼らは素で言っています。この状態で頭から怒鳴っても、とにかく拾え!とやっても意味がありません。あなたが通り過ぎたら、また同じことをやっています。

なぜか。必要性を納得していないからです。

価値観か損得か

実際の話、日本の社員も頭で理解したり納得したりしてやっているわけではありません。彼らの場合、より強力な『価値観』として染みついているのです。

しかし、20歳前後までこういう価値観とは異なる薫陶を受けてきた中国で、外国人がいきなり新たな価値観を押しつけようとしたところで、無茶というものです。日本と同じにはいきません。代わりに彼らが理解しやすい『損得』から必要性を納得・実感させなければなりません。

  • なぜ、職場環境を整理・整頓し、清潔に保たなければいけないのか。
  • なぜ、清掃担当でもないのに自分たちで持ち場の周囲を清掃しなければいけないのか。
  • なぜ、自分の仕事、上司の要求だけじゃなくて、部下の仕事まで見なければいけないのか……。

これらについて、皆さんは、部下が納得できるように彼ら自身の損得に絡めて教え諭すことができるでしょうか。通訳を介せば、より難度は高くなります。

日本では説明不要でしょうが、中国では「なぜ」から話を始めなければなりません。逆にいえば、必要性や理由が納得できれば中国の社員も動きます。動かないのは、文化や国民性の違いではなくて、納得できるように教育していないからなのです。

逃げ道を作らない

教育法の一つは、賞与や皆勤手当やポイ捨て罰金のように直接お金に絡めること。罰金は長短あるので、深刻にやるよりちょっと罰ゲームぐらいの感覚でやった方がいいでしょうが、お金に絡めると会社が本気で重視していることを示せます。一番ダメなのは、口で注意するだけ。やってもやらなくても損得関係なしと分かれば、何度言ったって動きません。

研修であれば、中国と日本の文化や習慣の違いを比較した上で、それでも中国にある日系企業で日本流のやり方を取り入れるメリットや必要性を明快に伝える必要があります。「ウチは日系企業だから」とか「ウチのルールだから」と説明してしまうと「ここは中国だ」とか「ルールだから守るけれど、まぁそこまで真剣にやらなくてもいいんじゃない」となってしまいます。

中国現法の人材育成は心理戦であり根比べです。イライラしたら負け。どういうツボを突いたら彼らに効くのか、試しながら精度を高めていきましょう。

2007.03 Jin誌 掲載を一部加筆

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