③人事制度と規定類に踏み込む(1)制度構築の鉄則

最近、制度や規定類の整備・見直しについて相談を受けることが増えました。立ち上げから無我夢中で走ってきたが、そろそろ次のレベルに成長するため仕組みを見直したい、という経営者の方が増えているわけで、私も嬉しくなります。

制度改革は建設的な機会ですが、社内への影響が大きいため、失敗した場合の反動も大きくなります。以下三つの鉄則を押さえて、ぜひよい方向へ会社を加速させる起爆剤にしていただきたいと思います。

制度構築の鉄則

(1)雛形・サンプルに頼らない

中国に来る前、人事制度を手がけたことのある赴任者の方なんて、ほぼ皆無。「社内に人事労務のプロはいないし、まして中国の、となると本社にもいない。何からどう手をつけていいのか全く分かんないよ……」。

つい、他社から入手した雛形やサンプルに、ちょっと手を加えて自社で使いたくなるのが人情です。雛形ベースの制度は導入の容易さという点でとても魅力的ですが、二つの致命的な問題があります。

一つ目が「靴に足を合わせることになる」点です。サイズや形の合わない靴を無理に履くと、靴擦れや外反母趾につながります。企業の制度も同じです。

雛形は他社の制度が基になっています。企業の規模、社歴、市場の成長度、エリア、そして企業文化や共有価値観などが異なれば、制度の骨格も当然異なります。急拡大する中国市場を開拓する企業と、安定生産が至上命題の企業では制度の重点が異なります。

大連・上海と天津では、一般的にかなり現地化の進度や事業環境が異なります。制度の狙いも当然異なります。極端な場合、ベースにした雛形が自社の目指す方向と全く逆の効果を助長していることもあります。

二つ目が「自社の成長に合わせて修正できない」点です。雛形は一種の完成形です。前提となった思想、社内の課題、社内外の環境といった構築の背景やプロセスが見えていないと、骨格の修正はできません。

結局、いつか本当に行き詰まった際に、より逼迫した状態でゼロから作り直すことになってしまいます。参考資料として雛形やサンプルを研究することはあっても、雛形の一部を手直しした形での制度構築は避けた方が賢明です。

(2)平等ではなく公平+明示を

平等と公平は全く別物です。そして中国の社員は日本以上に、公平であることを求めています。平等と公平の違いは、「平等=結果の平等」、「公平=基準・機会の平等、結果の不平等」です。

評価基準が明確であれば、評価結果や賞与が異なることは納得します。しかし、業績が好調だからみんな一時金で平等に還元というのは、中国では(実は日本以外では)受け入れられません。

また、日系企業では評価基準や評価結果を明示しない傾向がありますが、個人ごとのフィードバックが大原則です。これがないと、会社として高い評価をしていたつもりの社員が突然辞めていきます。公平で、社員に明示することを前提とした制度が必要です。

(3)粗くつくって運用を徹底する

制度構築で完璧を目指して力を入れすぎると運用できなくなります。制度と運用実態が乖離すると厄介な問題が起こります。社員が制度やルールではなく、自分の評価を決める上司の顔色を見るようになります。二重基準の誕生です。これでは公平性も明確性も確保できません。構築時には精緻さを追求せず、運用できるかどうかを最優先に想定しながら進めてください。

制度や規定に問題が生じた場合は、運用で調整するのではなく、必ず制度そのものを見直します。大きな組織では社内認可の手間が増えますが、この負担は経営者(と関連担当者)だけです。全社員に悪影響を与える運用での調整よりは、はるかにましと諦めてくださいね。

今回は一回で収まりませんので、来月(6月)も続けます。

2007.05 Jin誌 掲載

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