④人事制度と規定類に踏み込む(2)自社流の成果主義とは

前回、制度構築のポイントとして、『雛形の鵜呑み導入は危険』『公平な制度で明示する』『制度構築は粗く、運用は厳格に』の三つを挙げました。今回はその続きで、『成果主義制度の導入』について考えてみます。

このコラムをお読みの現法経営者の方で、「成果主義なんてウチでは考えたこともない」という方は、かなり少数派ではないでしょうか。ただ、皆さん、「導入するにしても、どう取り入れるか」で悩まれているように感じます。

私は、成果主義を導入するのであれば、個人業績と処遇の連動のような狭い成果主義ではなく、もう少し広い目で見て成果主義を導入することを推奨します。

成果とは営業成績に限らない

まず確認したいのは、「成果主義に明確な型はない」ということ。成果主義とは、「会社が仕事成果として設定した評価要素の達成度で社員を評価し、評価結果を処遇に反映させる」考え方です。

平たく言えば、「やった分だけ評価して報いる」考え方で、これは前回の公平性に通じます。ただ、成果主義で気をつける点は、売上や粗利益に直結した結果だけが『仕事成果』ではないということ。潜在能力や期待値ではなく、会社が仕事成果と設定したことを「どの程度やれたか」で評価・処遇反映すれば、それが成果主義です。

ということは、仕事成果の評価要素は、企業の戦略や方針、職位、職務によって異なる方が自然。

  • 何を仕事成果と評価するのか
  • どんな処遇に反映させるのか
  • 個人還元かチーム還元か

すべて企業の意思で設定します。
評価要素は、粗利額、生産性、重要活動(KSF)の遂行率、不良率、遅刻回数……。
反映処遇は、給与、賞与、特別手当、昇進昇格、海外視察研修……。
還元単位は、個人、チーム、全社……どう設定しても自由ですし、組み合わせても構いません。

手段を目的化しない

もう一つ重要なのは、「手段を目的化してはならない」ということです。人事制度を構築するのは、単純化すれば以下の(1)~(5)を回すためです。成果主義もこの方法の一つに過ぎません。自社の方針、文化、事業特性、業務などに照らして、検討している制度の導入が、(1)~(5)を回す上で逆効果にならないか検証する必要があります。

  • 自社が求める人材を採用する
  • 社員のやる気を高める
  • 社員の成長を支援する
  • 社員が核心業務を貫徹する
  • 結果として好業績が生まれる

例えば、固定顧客と長期的に業務提携していて、営業担当者個人の手腕で売上が増減しない事業の場合、営業担当者を個別に売上高で評価しても、不公平感を招くだけです。単独プレーの必要な営業前線で部門単位の賞与還元を行えば、優秀な担当者がやる気を失います。チームプレーの必要な現場で、個人プレーを助長するような評価・還元を行えば、周囲が不満を抱きます。

成果主義制度は、経営者の考えを具現化し促進するために導入するべきであって、導入を強く意識するあまり、目的を見失ってはいけません。

導入の「さじ加減」のポイント

最後に、私が相談を受けた際に基準としている、導入の「さじ加減」のポイントを挙げておきます。

  • 自社の業務や文化に合わない個人別インセンティブ制度は、入れない。
  • 経営者の本音を超えるような大胆すぎる成果重視の制度を入れても運用で破綻するので、やめる。
  • 仕事姿勢・勤務態度を軽視した個人業績の偏重は、避ける(経営者が危険性を承知の上であれば別)。

導入後は、前回のポイント、「制度構築は粗く運用は厳格に。課題があれば制度自体を修正」していきます。

2007.06 Jin誌 掲載

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