⑥仕事態度・ビジネスマナーの向上(2)態度だけは妥協しない

仕事態度の問題は、実は来年からはじまる労働契約法下の人事労務管理においても、核心の一つと言える非常に重要なテーマです。

能力・経験よりも仕事態度

弊社に相談に来られる経営者の方に、一貫してアドバイス差し上げることがあります。「採用も、教育も、評価も、態度要素が最優先です」ということです。この態度とは、やや広い意味で、仕事観、会社との向き合い方、成長意欲といったことも含みます。

なぜ、態度が最優先なのか。それは、態度に問題があると1人+1人が2人以上の力にならないからです。集まった人が相乗効果を発揮しなければ、会社という組織をつくる意味がありませんが、態度に問題があると、チームの調和を乱し、他人が仕事に集中する環境を壊します。

知識や経験レベルは、一番低い人でもゼロですが、態度が悪い場合はマイナスに働きます。つまり「いてもいなくても同じ、ではなく、いてもらわない方がマシ、いてもらっては困る」なのです。ですから、知識・能力の問題と、態度の問題は完全に分けて捉える必要があります。

採用時で言えば、態度でふるいに掛け、能力で選択します。態度要素に難があれば、他のどんな要素が優れていても不可にした方が良いというのが私の意見です。俗な表現で言えば「スペック重視の採用は止め、人物重視の採用に切り替えましょう」ということです。

試用期間の適性見極め、一般職の人事評価でも、態度を最重点要素とします(註: 管理職の場合、態度要素の評価ウェートは下げますが、これは重要度を下げるという意味ではなく、管理職に就く前提として模範的態度が求められ、これを満たした人しか昇級させないという意味です。中途採用で即戦力を登用する場合も同様です)。

教育も仕事態度から

教育においても同じです。仕事態度の良し悪しは、学習意欲や修得意欲に直結しています。コップに例えると、仕事態度の悪い状態は、口を下にして伏せた状態です。会社がいくら情熱的に水(教育)を注いでも、伏せたコップには溜まりません。

この状態で必要なことは、注ぐ量や注ぎ方を工夫することではなく、伏せたコップを上に向けること、すなわち仕事態度を、ぴしっと正すことです。

この順序を間違えると「研修に行かせても、講師を呼んで社内研修を実施しても、ほとんど効果がないんだよねぇ」という溜め息だけが残ることになります。

仕事態度と新法下の人事管理

経営コンサルタントの間には「戦略のミスは、戦術では決して取り返せない」という格言があります。より高次の失敗は、低次の成功ではカバーできないという意味ですが、私はこれを人事管理に当てはめて「採用のミスは、教育・評価・給与制度では決して取り返せない」と言っています。

9月号(注:テーマのつながりを優先し、Web版では本11月号の後に掲載)で、労働契約法の施行に備えた経営レベルの三つの強化ポイントを書きましたが、採用段階で、仕事態度の良い人・良い仕事観を持った人ばかりを採用できているとすれば、三つのポイントはほとんど意識する必要がありません。労働契約法への対応も、必要ではあっても苦悩するほどのことではありません。

とは言っても、厳格な人物重視の基準に基づいて、採用を継続してきた企業はかなり少数派だと思います。この場合は、前回の三つの強化ポイントに基づいて、公平に評価する、どうしても改まらない場合は、会社から降りてもらう仕組み作りと運用が重要になります。

本年3月号で「総経理、泣いて馬謖を斬れますか。中国の人材育成には、この覚悟が必要です」と書きましたが、これは態度の問題を示唆したものです。

どんなに能力があっても、成果を上げていても、仕事観や態度が悪く周囲に悪影響を与えるようであれば、涙を呑んででも斬らねばなりません。周囲の3人を踏み台にして3人分の成果を上げられる人物よりも、3人集まって5人分の成果を上げる環境づくりを大切にしなければならないのです。

2007.11 Jin誌 掲載を一部加筆

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