⑦2008年からはじまる労働契約法下の人事労務戦略

先日成立した労働契約法について取り上げてほしいという声を多数いただきました。紙面の制約もありますので、簡単に私の観点を書いておきます。

労働契約法の大きな特徴

私は労働契約法の特徴を大きく次の三点で捉えています。

  1. 長期雇用の促進(短期雇用の抑制)
  2. 散在していた規定類の整頓
  3. 労使協議体制の構築

(1)の長期雇用促進では、「無固定期限契約は10年後の話ではなく短中期の課題になる」、「労務派遣や契約不更新といった会社に有利な手段が使いにくくなる」といった変化があります。また、試用期間の給与や安易な契約解除についても制限が加わります。

(2)は、これまで通知、地方性法規など色々なレベルで散在していた内容を整頓してまとめた側面があります。例えば、契約期間の満了時に会社側が契約更新しない場合も経済補償金の支払いが必要になりますが、天津では細部が異なるものの『就業補助金』という名目で従来から存在しています。労働法では細かな規定がなかった試用期間も、地方レベルでは従来から具体的な制限が設けられています。

(3)は、今後想定される工会(労働組合)の設立促進や活動の活発化と合わせて捉える必要があります。従業員と密接に関わる制度や規則を制改定する場合、従業員全体と討議し、工会や従業員代表と協議して決めることが要求されます。 また、規則や重要事項の決定において、工会や従業員側が不適切だと感じた場合、会社に協議・改善を要求できるようになります。

経営レベルの強化ポイント

これらを前提に、経営レベルの強化ポイントは次の三点と考えます。

  • (a)社内規定・制度の整備
  • (b)評価と採用の高度化・厳格化
  • (c)社内コミュニケーションの強化

規定・制度の整備は説明するまでもありません。これまで分かっていたけど先延ばしにしていた、という規定・制度の整備はこれを機に早期に進める必要があります。まずは労働契約法について経営者自身が全容を把握してください。
評価制度の確立と運用の厳格化は、長期雇用化には絶対不可欠です。従来の「駄目なら契約非更新で対応」という切り札は使えなくなります。とくに、能力の有無に関わらず「自社にいてもらっては困る人材」を見極めることは経営の成否を握る生命線になります。

試用期間での契約解除。来年以降、最初の固定期契約の期間満了時に更新するかどうかの判断。契約期間中の途中解除。いずれも評価制度の運用が不可欠です。

また、「とりあえず採用」も止め、本来の「当社が求める人材を採用する」姿に立ち返る必要があります。評価要素・基準の確立は採用基準の明確化にも直結しますので、やはり長期雇用の前提としてとても大切になります。
社内コミュニケーションの強化は、上記の(a)(b)において必要ですし、将来の工会設立、労使協議体制の構築に備える意味でも重要です。

工会設立が避けられない流れとなれば、受け身ではなく設立を積極的に支援する準備をし、いよいよという際に即応できる体制を取っておいた方がよいと思います。

私は労働契約法の施行を「黒船襲来」とは考えていません。適切な人事労務管理を行っているかどうかがダイレクトに問われる時代に入るような気がしています。

失敗すれば、経営上のダメージはこれまでと比較にならないほど大きくなりますが、見方を変えれば退路を断って経営のレベルを一段引き上げる機会と言えます。危機と機会は裏表。どうせ必要であれば、チャンスと捉えて取り組む方がプラスではないでしょうか。

2007.09 Jin誌 掲載

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