【2018年03月刊】駐在員を教育するぐらいなら現地社員を教育せよ?7

久しぶりに難波へ行きました。中国からの客人が、ある海鮮料理のお店で食べたいと指名で希望、そのお店が難波エリアにあったからです。私は地図アプリを見ながら目的地を目指しただけなので、うかつにもそこが「どんなエリア」であるか考えていませんでした。早めに入ったお目当てのお店で食事を終え、じゃ口直しに珈琲でも飲みながら、と外に出て、通りを一つ曲がったところが道頓堀でした。実際声に出して言いましたよ「なんじゃこりゃ!?囧」。

もう商店街から橋の上から、視界のすべてが人の頭でぎっしり。飛び交う声はほとんど非日本語。あまりの過密さに一同呆然としましたよ。あんなことになっているんですね……。春節直前の金曜日であることを差し引いても、とんでもない状態でした。あれをさばく大阪の店員さんやサービス係の皆さん、すごいです。

難波でアジア客の熱気に圧倒されて時代の変化を感じつつ、駐在員の時代の変化について続けます。

●駐在難度が上がっている原因

□高成長時代が終わった

□駐在者と現地社員の経験の交差

□中国から見た日本像の変化

□法律・政策の変化

多くの日本企業が本格的に中国進出してから、法律・政策面で二度の大きな変化がありました。一つ目は前回挙げた「労働分野の変化」。そしてもう一つが「環境分野の変化」です。

経済を犠牲にしても環境対策を徹底する

昨年から現地にいる皆さんは痛切に感じていると思いますが、中国政府の環境問題に対する姿勢は、短期間で劇的に変化しました。経営者にとっては、対応を誤れば会社を潰すぐらいの環境変化です。実際に、移転を要求された、頻繁に営業停止指示を受けている、億単位の対策費や罰金が発生した、撤退・清算を考えているという話は、それこそ数限りなくあります。

もともと環境保護や法令遵守に対する意識が高い日系企業でさえ大変な情況ですから、国内系の企業の情況はもっとずっと深刻です。天津の銀行・不動産屋・美容室などで「景気はどう?」と聞いてみると、「ここ数年はずっと悪いが、2017年は一番ひどかった。天津はもともと工業が盛んだが、環境規制の影響をもろに受けて青息吐息。当面は先行きも暗いな……」という声が返ってきます。国内企業は目こぼししたり、他の優遇策で拾ったりという救済策もなし。目下の経済を犠牲にしても環境対策を断行するという中央政府の強い姿勢が分かります。

この方針、少なくとも2020年までは続きますし、ここまで徹底すると、大きな後戻りもないのではないかと感じます。時代が変わったと受け止めて適応しないと、「適者生存」の原理から外れていくことになります。

現在の変化、厳しさは、以前の中国経験者には分かりません。頭で理解できても感覚的についていけないと思います。私が思い出すのは、2003年に初めてTEDA(天津経済技術開発区)の外資誘致センターを訪問した際のこと。対応してくれた主任の二人に、「このまま発展を進めると、いずれ交通問題と環境問題に直面する。いまから想定している対応策はありますか」と質問してみました。回答以前に、「なぜそんなことを聞くの?」と最後まで質問の趣旨が伝わりませんでした。お二人とも博士号を有する若い女性で、受け答えから非常に優秀な方々だと感じましたが、それでもこういう認識レベルだったのです(というか、認識そのものがなかったのです)。

2008年以降の労働分野、2016年以降の環境分野の変化に共通することは、「企業や経済の発展を犠牲にすることも厭わない」政府の姿勢です。これは従来あり得なかった優先順位の大転換であり、最近の駐在員が直面する高いハードルです。

2018.03 Jin誌

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