社内世論を味方にして成功し、敵に回して沈んだゴーン氏

これを書いているころ、日本の日産問題で衝撃を受け、中国のD&G(ドルチェ&ガッバーナ)問題でまた衝撃を受け、まだその余韻が残っています。

日産のゴーン氏は、瀕死の日産を文字通りV字回復させた立役者。改革当初の数年間は彼の記事を細かく読み、内部で変化を経験した知人たちの話を聞き、書籍も読みました。クロス・ファンクショナル・チームによる改革推進やコミットメントは新鮮でしたし、ゴーン氏の日産改革から学んだことは少なくありません。同時に日本的感覚では素直に受け入れられないような超高額の自己報酬も、いろいろな意味で新鮮でした。日本の経営に新たな考え方を示したことは間違いありません。

そして今回の逮捕劇。登場から退場まで、よくも悪くもここまで強烈なインパクトを残すリーダーは珍しいです。私は田中角栄氏を思い出しました。毀誉褒貶あって人により評価は分かれるでしょうが、田中角栄氏がいなければ、日中国交正常化はあれほど早く実現していなかったかもしれませんし、ゴーン氏がいなければ、日産は存続できなかったかもしれません。

ゴーン氏と日産の件は、まだ事が進行中であり、この先どのような展開が待っているか分かりません。ただ、日産にとってだけでなく、日本の経営史にとっても、一つの時代が終わったように感じます。ゴーン氏が日本の経営に与えた影響はそれぐらい大きなものがありました。

社内世論の重要性を体現してくれたゴーン氏

さて、ゴーン氏の話、このコラムのテーマともたいへん深い関係があります。前回まで、「改革において社内世論は非常に大事」という話をしてきました。ゴーン氏はこれについて日産時代の前半で鮮やかなプラスの結果を、後半でマイナスの結果を体現してくれました。貴重な実例として学んでおく価値があると思います。

ゴーン氏が日本へ来た当初、日産社内の人から聞いたのは、とにかくもの凄いスピードで社内各層の人たちとの面談を設定した、ということでした。そして、面談も踏まえて若手や中堅を中心としたクロスファンクショナル・チームをつくり、当時は「達成不可能」と言われたコミットメント(達成できなかったら経営陣総退任を賭けた必達目標)を掲げました。工場閉鎖や取引先選別など、強い痛みを伴う施策が続きましたが、それらをやり遂げてコミットメントを達成できた要因の一つが、若手や中堅など、社内世論の多数を占める人たちを味方につけたことだったと思います。逆に言えば、ゴーン氏や幹部がいかに優秀で筋の通った話をしても、社内世論が反発していたら、コミットメント達成は不可能だったと思います。

それから十五年以上の月日が流れ、今年十一月、ゴーン氏逮捕のニュースが全世界に流れました。私が注目して見ていたのは社内の反応です。まだ突然の一報が入ったばかりで皆さん困惑気味でしたが、「ゴーンさんに限って、考えられない」「何かの間違いではないか」「私は彼を信じたい」といった声はほとんどありませんでした。仮に、社内世論がかつてのようにゴーン氏を支持していたら、果たして西川社長が今回の告発に踏み切ったか、踏み切った後に社内の大反発や大混乱を招かなかったか……と考えると、ゴーン氏はすでに以前から社内世論の支持を失っていたように思います。

我々がゴーン氏から学ぶべきことは、現地法人の外からやってきた(そして数年後には去る)駐在員にとっても、社内世論は非常に大事だということです。皆さんが本社の論理や経営の都合だけを振りかざしたらどうなるか。人間関係を築く前に彼らの痛みを伴う改革を要求したらどうなるか。皆さんが一部の積極的抵抗派と戦いに突入した際、社内世論が皆さんを白眼視していたら何が起きるか。ゴーン氏は、その栄光と屈辱の落差をもって教えてくれています。

2018.12 Jin誌

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