コラム

年下上司と楽しく働ける人、働けない人【50代必見】

2025年08月11日
中国駐在…変化への適応さもなくば健全な撤退

日本では年下上司・年上部下が珍しくなくなりました。海外でも設立から10数年も経った拠点へ赴任すると、年長者が部下になることは少なくありません。私も中国に来てから年上部下を持ちましたし、日本で年上の後輩の育成を担当したこともあります。

年下上司+年上部下の組み合わせは、うまくかみ合っている場合と、非常によくない状態に陥っている場合があります。今回は、年上部下の立場から、年下上司のもとで楽しく働ける人・働けない人の違いを考えてみます。

毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
小島のnoteをこちらに転載しています。

───────────────────────

年上部下は組織の頭痛の種

同世代へのエール

私も50代になり、年上部下を持つ人たちと完全に同世代。今日の話は、聞く人によってはカチンとくるかもしれません。

私としては、批評やイジリではなく、完全に同輩に対するエール。年上部下に対しては、こういうスタンスでいた方が結局は自分のためになるかも…と思うことをまとめました。共感してくれる人もきっといると信じます。

組織における年上部下の位置付け

普段、私は中国でも日本でも、どうすればスムーズに組織の世代交代ができるのか、新陳代謝を進められるかといった観点から、日本企業の組織づくりをサポートしています。

組織の活力を維持する、あるいは高めていくことを目指す立場から言えば、年上部下の存在は頭痛の種の一つであることは間違いありません。

なぜ頭が痛いのか。まずは立場逆転のやりづらさです。年下のリーダーから見ると、もともと上司・先輩だった人が自分の下に来るわけですから、これはやりにくいです。

指導・指示もしにくい。向こうから「あなたが上司なんだから、遠慮しなくていいよ」とでも言ってくれればマシかもしれませんが、なかなか難しいです。頑張って指示・指導しても、話を聞いてもらえないこともあります。

常にマイウェイな人もいます。自分はアンタッチャブルな存在だと思い込んでいるのか、チームと無関係に勝手に動いている。リーダーも若いメンバーも「あの人には言ってもしょうがない。ほっとこう」となり、悪い意味で特別扱いがどんどん進んでいきます。

過去の栄光に執着するのもよくあるケースです。過去の先輩たちの活躍が今の会社を築いてきた一面はあるものの、過去のツケで歪みや課題が蓄積されているのもまた事実。負債を解消しようと奮闘している若い世代に、栄光の時代と称してやたらポジティブな自慢話をしても閉口されるだけです。「アンタの時代にあんなことをやらなかったら、今こんなに苦労しなかったのに」と怒っているかもしれません。

年下だからと上司を立てないのも困りものです。しかもそれを指摘されると怒ったりすねたりする。会社の自分への扱いに対する恨みや不満を抱えている人、シンプルにやる気がない人とも、楽しく働くのは難しいです。

楽しく働ける人はどこが違うのか?

周りのメンツを立て、自分に今できることを考えられる

こうした「困った年上部下」とは対照的に、年下の上司と楽しく働いている人もいます。どうしてもマネジメントが難しくなりがちなところを、お互いに敬意を抱き、持ち味を生かして仕事をうまく進めている。楽しく働ける人は、働けない人とどこが違うんでしょうか。

まずはメンツの扱い方です。自分のメンツにこだわる年上部下は扱いづらいもの。逆に、年下上司のメンツをうまく立ててくれる年長者がいると、上司は正直、助かります。

また、自分の利益だけを考えている人はうまくいきません。「どうせ定年までこんなもんだから」「頑張ったところで今更関係ないし」という態度では、周囲も扱いに困ります。

年長者として、チーム全体のために自分ができることは何かを真剣に考えられるかどうか。それも過去にできたことにいつまでもしがみつかないで、今できることを自分なりに考えること。

実際どこまで戦力になるかはともかく、「チームのために」という姿勢を示すだけで周りの受け止め方は全然違います。

主張の仕方を工夫する

年上部下が自分も無価値ではないと主張したい気持ちはわかりますが、その言い方も大切です。年下のリーダーや若い人たちの価値を演出できる人と、「オレだって」みたいに張り合ってくる人では大違いです。

年下の上司に対して「部長、すごいですね。正直なところ、自分が同じ年齢の時にこの仕事は無理だったと思います。ここまで考えていなかったし、こんなスピード感で仕事に取り組んでいませんでした」と口に出して認める。

自分よりうんと若い人に、「AIの使いこなし方、すごいね。さすがに自分も今のレベルのままでは恥ずかしいな。せめてこういう仕事を毎回みんなにお願いしなくてもいいレベルにはなりたいので、ちょっと教えてもらえないかな」と教えを請う。

このように周りを立てながら「自分はこれを学びたい」と言ってくれると、年下の人たちも付き合いやすくなります。

完璧な人間はいませんから、時には年上の自分に対して失礼な振る舞いがあるかもしれません。そういう時にいちいちカチンときて「バカにするな」という姿勢で臨むのか(これはある意味、同レベルの精神年齢)、荒削りながらも仕事の最前線で頑張っている年下世代を見て「頼もしいな」と思えるか(いい意味で上から目線)。

会社の将来を担う若い人たちへの目線は、しっかり周りにも伝わります。

不満を垂れ流さず、健全な自尊心を保つ

組織人として誰にでも不満はあります。自分をこういう立場に置いた経営者、元上司、人事……。そうした人たちに対する不満を職場で態度に出してしまう人がいます。現在の年下上司や同僚とはあまり関係ない話だとしたら、ただの八つ当たりです。

一方、感謝すべきことを忘れず、不満があっても胸に秘めておける人もいます。他のシビアな会社であれば、自分の年齢では完全に居場所がなくなり、給料も半分にカットされていたかもしれない。退職金だって、実は今の若手より優遇されている。そう考えれば、居場所を与えてもらえること、今もこれだけの処遇をもらえることに感謝しようと思える人たちです。

また、防御的な自負心を振り回す人も周囲を困らせます。自分のプライドを守るためにやたら攻撃的になったり、言い訳したり、他人のできていないところを指摘したり……。そうではなく、健全な自尊心を示せるかどうか。

健全な自尊心というのは私の造語で、自社では評価要素にも入れています。自分は今よりも人間として成長できる、まだ新たな挑戦や社会に対するより大きな貢献ができるはずという、自身の潜在力に対する確信です。

これがあれば、過去と違う立場であっても、今のチームで自分ができることや、チームの力を最大限に発揮するための自分の役割を考えられます。自分は今もチームに貢献することができるという自尊心か、過去の自分を守るための偏狭なプライドか。この差は大きいです。

組織人生の締め方が問われている

いろいろ見てきて思うのは、年下上司への対応には、組織人生の締め方が問われているということ。最後に「やっといなくなってくれた。ホッとした」と思われて終わるのか、それとも「自分もいずれ行く道だけど、あの立場でここまでやれるのは本当にかっこいいな」と思ってもらえるか。

自分に対してもそうです。「最後まで貢献できてよかった」と満足して去るか、それとも「最後にケチがついた仕事人生だったな」と思って終わるのか。年上部下としての振る舞いには、去り際の美学がかかっています。

今日のひと言

年を重ねたら能力より器量で勝負

年齢を重ねたら、能力や実績より器量で勝負です。同じ土俵で戦い続けるのはなかなか難しいかもしれませんが、私も若い人たちに「人としての器には学ぶところがある」と思ってもらいながら仕事人生を締められたらいいなと思います。

経営者目線のディープな話をほぼ毎日配信中

中国事業の最前線から、ビジネスに関する時事ネタや
情報・裏話などを無料でお届けしています。

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。