コラム

【広東・上海版】13.持続可能な経営のために

2024年02月20日
人事労務は海外経営の基礎

前回紹介したように、私は社内の衝撃的な体験から「一人でもチームの利益より自己利益を優先する人間がいると、他の社員は本気で仕事に専念できない」と悟りました。それから中国で組織課題の解決を重ねるうち、自分の直観が間違っていなかったと確信を深めました。他人の挑戦・成長・貢献を冷笑する者だけではありません。ズル病休や偽造労災や不当な私的利得行為も撲滅する必要があると考えています。

難しい理屈ではありません。業者と癒着してのうのうと年に10万元の不正収入を得ている輩がいる横で、「がんばって評価されたら500元昇給するぞ」と言われてどう思うか、という話です。病気休暇を取って居酒屋を開いたりバイトに精を出したりしている社員を見れば、「彼らの分まで仕事している自分たちが、彼らの休暇時処遇を稼いでいる」と感じます。馬鹿らしくて、こんな会社で熱心に仕事する気にはならないでしょう。成長意欲のある社員は見切りをつけて辞めるか目の輝きを失っていきます。

中国の事業環境は、どんどん強者や環境適応者しか生き残れなくなっています。人材採用難・人件費の上昇・競合の競争力上昇・各種政策への対応……。売れる商材の投入や販路拡大など、お湯を注ぎ続ける努力と工夫は必要ですが、その前に栓をしなければ徒労に終わります。ここでいう栓とは、組織の活力を削ぐ要因や無駄なコストをきっちり潰す環境づくり。中国では仕方がないと諦めず、ダメなものはダメと筋を通す経営者と企業を応援していきたいと思います。

2022.05 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。