コラム

自立するのが理想形という幻想 後

2025年08月28日
日本流が通用しない時代の組織経営

前回は、五十歳を目前にして、五十肩やら老眼やら睡眠障害やら、老化(または更年期)によるトラブルが頻発している話、でもサプリを工夫してから、一度も熱を出していない話を書きました。

ある時、医者から「一生薬を飲み続けるのは、薬漬けみたいに抵抗感があるかもしれない。でも気にするほどの副作用がなければ、飲み続けて、快適に過ごすという選択肢もあるよね。これを薬なしで数値改善しようと思ったら、相当大変なことをやらないと無理よ。それは理想かもしれないけれど、けっきょく貫徹できずに健康を損なうくらいなら、薬を使っても、QOLを高める方がいいでしょ」と言われて、それまでの私の考え方が変わりました。

実際、その考え方をサプリで使っています(薬の方は再検査で無罪放免となったので不要に)。だからサプリを選ぶ際も、高価なものは選びません。むしろ、ビタミンとかEPAのように手軽で入手しやすいものを中心に。でないと続かないと思うからです。自分にフィットするサプリと量を見つけて本格的に常用してみた結果、私のQOLは確実に上がりました。

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さて、この話、私の仕事観にも大きな影響を与えました。

中国に渡ってから15年以上、私には経営コンサルタント時代の意識がどこかに残っていて、「最後は顧客企業が自立してマネジメントできるようになるのが理想形」だと思っていました。医者にずっと依存するような状態を健康とは言わんだろうと。

しかし、自分がサプリを常用(ある意味、サプリ依存)するようになって、ようやく気がつきました。お客さんにとって必要なのは、自立運営することではない。現地事業の持続的な発展であり、正当な利益を確保することだと。

経営のトップ(駐在員)は3〜5年で入れ替わる。経営を現地化するとブラックボックスが発生する。だったら、外部のプロが継続的に規律の確保・ルール通りの運用をチェックすればいい。チェックで問題を発見すれば経営に報告し、必要に応じて問題解決も代行する。これならお客さんの手間も最小限で済むし、駐在員交代の影響も受けない。

このやり方のデメリットは、費用発生と外部に頼りっぱなしになること。ただ、「自社で現状把握するのにどれくらいの労力と時間がかかるか。規定を再整備して導入するのに、さらにどれくらいの労力と時間がかかるか。駐在員や日本側担当が入れ替わってもルール通りの運用チェックを継続できるか。そもそも果たして実行可能なのか……」を考えると、医者の言った通り「実現できずに正当な利益を損なうぐらいなら、外部を使ってもQOLを高める方がいいでしょ」ではないだろうか。

現在の私は、弊社で支援し続ける前提の提案を躊躇しなくなりました。むしろ、この方が海外拠点でモグラ叩きの労務管理を卒業する王道だとさえ考えるようになりました。残るは「使い続けやすい費用と効果の追求」。ここに焦点を当てて取り組んでいます。

2022.12 Jin誌

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この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。