コラム
アットホームな職場が崩壊する必然…ブラックだからではなかった!

私の会社では、採用活動の際に「絶対に『うちはアットホームな雰囲気で』みたいな話をするな」と厳命してあります。
最近の若い人は「ああ、アットホームをアピールする職場ほどブラックだからね」と思うようですが、そういう意味ではありません。
私が担当する最終面接も、入社時も、新人教育でも、ことあるごとに「うちはアットホームではないし、アットホームにしてはならない」と言っています。なぜなら、アットホームにするとチームが崩壊するから。今回はそう思う理由をお話しします。
小島のnoteをこちらに転載しています。
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アットホームな職場はなぜ崩壊するのか
アットホーム=家族的な気楽さ・温かさ
今日はブラック企業の煙幕としての「アットホームな職場」ではなく、文字通りの意味で、むしろホワイトな職場という前提で話を進めます。
アットホーム、つまり家にいるような感じですから、家族的な気楽さ、温かさがあり、くつろげる雰囲気の会社ですね。
家族というのは、すべてのメンバーを無条件に肯定します。勉強ができる子もできない子も、運動ができる子もできない子も、同じように居心地がいい。そうではない家庭もありますが、それはアットホームとは言わないでしょう。
つまり、アットホームな会社では、挑戦・成長・貢献する社員もそうじゃない社員も同じように大事にされるということです。努力・工夫する人もしない人も同じように肯定される。ここまで来ると「んー、会社としてはちょっと違うかな」と感じる人がいるかも。
家族は平等な方がいい。何の条件もなく、みんな大事。そして平等であるということは、必然的に不公平です。
平等とは前提に関係なく一律に遇すること。法の下の平等、男女平等などと言いますよね。一方、公平とは機会や評価基準が一律な前提で、結果に応じて遇すること。フェアな審判、フェアな採点などと言います(でも、勝ち負けや順位は分かれます)。
概念的に、平等と公平は並存できません。平等=不公平、公平=不平等。どちらがいいかという話ではなく、集まりによって向き不向きがあります。
家庭やシェルターのような場では、誰でも包容する平等性が大事。ここで公平性(学校の成績順に小遣い額を分けるとか、実家に帰省した際は年収で扱いが違うとか)を追求し出すと、本来のよさが失われていきます。
一方、チーム競技や企業のように、競争があり結果を追求すべき組織においては、平等(成長・挑戦・貢献してもしなくても同じ)だと、みんなのために頑張っている人ほど報われません。やっぱりおかしくなっていきます。
アットホームな組織は上から消える
組織のピラミッドで考えてみましょう。ここで言うピラミッドとは、役職や年齢による階層ではなく、会社への貢献度で上から並べてみたもの。上の方はぜひとも長期にわたって活躍してほしい人材、下の方は正直言って辞めてもらえたらホッとするような人材です。

アットホームな組織の新陳代謝
アットホーム=平等な職場では、このピラミッドの上の人からいなくなる。平等な環境では貢献度が高い人ほど損なので、そういう人から消えます。
見切りをつけて他社に行く、引き抜かれる、独立する、あるいは頑張るのが嫌になって下に落ちていく…。本来、組織の活力を維持するには下の方から消えていく組織にしなければいけないのですが、アットホームにやっていると上の方からいなくなります。
そして、下の方ほど辞めない。なぜなら、挑戦・成長・貢献しなくても頑張らなくても、同じように処遇されるから。こんなおいしい環境は手放せません。公平な他社に行くなどまっぴらゴメンです。
組織が追求すべきこと
組織と家族は違う
組織は家族とは違います。生まれてから無条件に割り振られているのではなく、自分たちの志・ミッション・ビジョン・目的を持って集まっている。営利団体である企業はもちろん、非営利団体であっても、それを実現・達成・追求するための集まりであって、家族とは根本的に成り立ちが違います。
こういう成り立ちの集まりがアットホーム=不公平だと、組織が回らなくなります。家族にとっては居心地がよくても、企業は潰れます。
プロスポーツに学ぶ組織のあり方
アットホームがダメなら、組織はどんな状態を追求するべきか。こういうのは最もシビアな人たちに学ぶのがいいと私は思っています。
例えばプロのチームスポーツ。超一流のプロが集まるチームはどんな状態か、考えてみましょう。
チームとしてよりよい結果を出すのが仕事なので、本気で議論し、お互いにダメ出しをします。エキサイトして火花が散ることも。ぶつかり合うだけならただ我が強くて仲の悪い集団。しかし、超一流のチームはそれで終わりません。
厳しいことを言いながらも、チームファーストは徹底。チームとして結果を出す、そのためにやるべきことを追求するという本質は外しません。
それから、ダメ出しするのは「求めたらできるはず」のことに対して。本来できるはずなのに、できるべきことなのに足らなかったら強く指摘する。ある意味、お互いやチームの潜在能力に対する深い信頼があります。
チームファーストを機能させるため、最低限の規律は必要です。人気プレイヤーだからといってワガママを許してしまうチームは一流にはなれません。もともと超一流だったチームが低迷する時は、規律の緩めすぎが原因だったりします。一方、選手は大人でプロ。自己裁量の幅も必要です。この両立がうまくいっているのがいいチームだと言えます。
今日のひと言
アットホームは不公平である
規律と裁量をベースに、時にはぶつかり、時には深く認め合う。志・ミッション・ビジョンを追求する組織にとって大事なのは、家族的な温かさ・優しさではなく、プロのチームワークです。
お互いに厳しい要求もするし、チームファーストが徹底できない人には組織を離れてもらうかもしれない。志・ミッション・ビジョンを追求し続ける組織であるためには、家族的な温かさとは決定的に違う要素がなければならないと思います。
アットホームはすごく平等なのですが、言ってしまえば不公平です。そういう組織は必然的に崩壊への道をたどります。
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この記事を書いた人
多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。