「人事制度の意義・目的は何か」と聞かれたら、私は「組織と社員の挑戦・成長・貢献を促して、組織の継続的発展に資すること」だと答えます。しかし、現実に聞く声はこの真逆。現在の人事制度がかえって社員のやる気を下げているという話は少なくありません。
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人事制度の本来の意義とは、社員と組織の自立した挑戦・成長・貢献を促し、会社の持続的な発展に寄与するための仕組みであり、それを加速させるための仕掛けだと私は定義しています。
しかし、人事制度が社員のやる気を上げるどころか逆に下げてしまっているという嘆きは、実際によく耳にします。これを放置していると、組織の健全度はどんどん落ちていきます。
今回は、「社員のやる気を減退させる人事制度」の特徴を13のポイントにまとめました。
意外にも海外でよく見られます。事業の成長期はベースアップが当たり前。私も文句を言うつもりはありません。中国だって、高度経済成長期には毎年10%〜20%の昇給をしている会社はザラにありました。
こういう特殊な時期に人事制度をつくると、昇給をベースアップだけに頼りがち。自分の頑張りが給料に反映される仕組みがないため、成長期が終わった後は誰も努力する気になりません。
設立から5年ぐらいまで、組織図はまだスカスカ。昇格ポジションはいくらでもあります。ところが、ポジションが埋まった後は、同じペースで昇格者を出すことはできなくなります。昇格しなければ昇給もない。だからといって昇給のために昇格させるのは本末転倒……。
組織のバランスを崩さないためには、昇格を制限するしかありません。結果、昇格枠がないという会社側の都合により、社員は頑張っても昇給しなくなります。
人事制度が「挑戦・成長・貢献をしたら報われる」という設計になっているから、認められるように頑張ろうと思うわけです。でも、処遇がそれ以外のところで決まっていて、やってもやらなくても大して変わらないなら、普通は頑張りません。
率を固定して、一律10%の昇給とか3か月分の賞与とか決めていると、ベースの給料が高い人ほど有利です。月給10,000元の10%と、3,000元の10%ではだいぶ違います。日本でも月給50万円の人と20万円の人の3か月分は差が大きいですよね。
率固定は公平に見えますが、実は高処遇層・既得権益層に有利な仕組みです。それを会社が狙っているならともかく、若手が割を食い、やる気が削がれるのは間違いありません。
どう頑張れば報われるのか、社員が腑に落ちていないなら、制度が存在しないのと同じです。評価と処遇の連動が不十分であったり、仕組みはあっても理解されていなかったりすれば、みんなのやる気に火がつきません。
「あの人は実務に貢献している」「頼りになる」といった周囲の感覚と、評価点数が一致しないことがあります。みんなは貢献度が高いと思っているのに、自社の人事制度に照らすと評価が低い。逆に、貢献していないように見えるのに評価点数だけがやたら高い人もいます。これでは、低く評価された人のやる気はもちろん下がりますし、周囲も「これがまかり通るのか」とモヤモヤが残ります。
日常的に自分の仕事を見ていない上司に、期末だけ評価されても腹落ちはしません。私も日本で評価される側だったときは納得できなかった経験があります。見ていない人に何を言われても説得力がありません。
上司が「結論ありき」で評価しているな、と分かってしまうときがあります。「先輩が昇格タイミングだから、自分で帳尻合わせしている」などと感じれば、「来期も頑張ろう」とは思いません。「いずれ先輩と同じ年次になったらA評価をもらえるはずだ。あと2年はどうせBなんだから普通にやればいいや」と考えます。
私も経験があります。自分の評価に釈然としないものを感じましたが、何も説明してもらえませんでした(これが転職動機の一つに)。評価がBなら、「なぜBなのか」「Aとの差はここ」「来期はここを伸ばせばA」といったフィードバックをしないと、評価結果が腑に落ちません。
自分の上司で課長や部長のポジションが埋まっている場合です。昇格は年功序列で、上司がさらに昇進するか、いなくならない限り、入れ替わりはあまりない。部長はまだ40代、定年退職まで順調にいってあと15〜20年。自分がいま33歳として、15年後にようやく課長になる頃には48歳……。
どうでしょう。私なら転職を考えます。年次順で報われる運用になっていると、やる気のある若手や、能力と自信がある人から去ってしまいます。
制度上はいろいろな仕組みがあるけれども、結局、運用で結果を同じに整えているケースです。評価・処遇・賞与の査定・昇格タイミングなど、やってもやらなくても大して変わらない。自分一人で奮闘しても、周りから浮いてしまうだけで意味がありません。
目標管理が形骸化し、運用のための運用になっていることがあります。目標管理の維持には結構な手間がかかりますが、「どうせ最後に経営陣が調整するんでしょ」とみんな分かっている。全員がうんざりして、目標達成のために来期はどうするかなど本当に中身のあることは誰も考えなくなります。
海外拠点のケースです。歴代の駐在員が抜擢人事や特別承認を連発しています。そもそも人事評価は主観の世界。評価者によって観点が違うのは当然です。それでも制度の枠内で運用していれば、評価者が変わっても一定の枠には収まります。
抜擢人事や特別承認というのは制度の枠を超えた話です。つまり、制度を破壊・無視して特権を行使している。しかも、それを代々やっている。これでは制度本体を信頼する人がいなくなります。
前任者と現任者と後任者で基準が違えば、誰もが今度の駐在員にどうやって取り入るかばかり考えます。現任者と折り合いが悪いと、何をやっても評価されず、会社のためになる助言・提案をしても取り合ってもらえません。「現任者が帰るまで自分は一旦スリープモードだ」となってしまいます。
ここまで、どういう人事制度がかえって社員のやる気を下げるのか、13の特徴を見てきました。要点は「自分が挑戦・成長・貢献・努力・創意・工夫すると、どのように報われるのか」。ここのつながりが見えなければ、人はなかなか頑張れません。
頑張ってもしょうがないと思わせてしまうような要素をつぶしていかないと、仕組みが社員のやる気を阻害します。「うちの社員はモチベーションが低い」と嘆く前に、ぜひ自社の人事制度をチェックしてみてください。
人事制度が与える影響について、プラスとマイナスの幅は0〜100ではなく、-100〜100だというところに注意してください。制度の存在の仕方によっては、むしろ社員のやる気を削ぎ、なくした方がスッキリすることさえあり得ます。
人事制度が与える正負の影響を直視し、自社の制度・運用はどうなのかを棚卸しして、少しでもプラスになるように改革してもらえたらと思います。
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多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。 事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。