コラム
「ウチの規模では無理」 常に受け身な大企業にモヤモヤ
モヤモヤしていることを口に出しちゃう回。やや辛口でお送りします。
私が長年抱えているのは、「ウチの規模では無理」という、受け身発想な大企業に対するモヤモヤ。大組織のリーダーやミドル層に読んでほしいです。
小島のnoteをこちらに転載しています。
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私が長年抱えているモヤモヤ
モヤモヤの正体
大企業の人と他社の事例について話していると、結構な割合で「それって従業員が1000人を超えても可能?」「100人までの話だよね」「ウチの規模だと無理だろうなあ」といった反応が返ってきます。成功例やさまざまな工夫に対しても「もっと大手の事例ないの?」で流されることも多いです。
こうした反応になぜモヤモヤするのかといえば、「え、そこで終わっちゃうの?」と感じるから。
世の中の企業構成で圧倒的な大多数は中小企業。そこにおける取り組みが、事例全体でも大きな割合を占めています。それなのに同じような規模の会社からしか学べない、大企業に小さな企業の取り組みは応用できないのであれば、大手は学びの対象となる企業の数がガクンと減ってしまいます。
ここで思い出すのは、「愚者は賢者からも学ばず、賢者は何人からも学ぶ」という言葉。小さな企業のやり方を「参考にならない」と切り捨てるのは実にもったいない。大企業は中小と違って資源も豊富に持っているんだから、うまく活かせばいいのにな。こうした思いがモヤモヤの根源にあります。
モヤモヤの原因
もう少し掘り下げると、「ウチは大きいから」という発言には、「ウチは特殊だから」に近いものを感じます。
これについては、日本で経営コンサルタントをしていた時代に上司から言われた言葉がずっと印象に残っています。
「小島、訪問すると、よく『ウチの業界は特殊だから』『ウチの会社は特殊だから』で終わらせようとする経営者・幹部がいる。こういう会社は、だいたい業績が悪いか、大きな課題があると考えて間違いない。覚えておいた方がいい」。
「ウチは特殊」という言葉の裏には何があるのか。結局は、変わりたくない・学びたくない・しょうがないという現状肯定(変化の否定)です。現状を変えることに対する無意識の抵抗感・拒否感が「特殊だから」という言葉に表れています。
「ウチは大手だから」と言われてしまうと、これと同じような感覚が蘇ります。企業規模を言い訳にしていては学びの機会がない。「小さい会社の事例は役に立たない」と頭から切り捨てるより、それを大企業でどう活かすか考えてみた方が、ずっと建設的ではないでしょうか。
見切るより活かし方を考えて
小組織の事例に対するアプローチ
もちろん、小組織の事例はそのままでは使えません。50人、100人の会社でやっていることをいきなり2000人の会社でやるのは無理ですよね。
活かし方は大きく二つあります。
一つは、「大組織に取り入れるためにはどのようにしたらいいだろう?」という発想。組織の規模に合わせて方法をアレンジするアプローチです。
もう一つは、「組織を小さく分ければ取り入れられるかも」という発想です。やり方に合うように自分たちの組織を小分けにしてみる。私は特にこのアプローチが好きでよく使います。
組織の規模を合わせてみる
組織の規模は、小さすぎても大きすぎても効率が悪いです。
どんな規模の会社でも、総務・人事・経理といった間接部門に人を置く必要があります。100人規模までなら1人か2人いれば十分。ただ、1人以下にすることはできないので、10人の会社も100人の会社と同じ人数を配置しなければなりません。組織が小さすぎると、どうしても過剰配置になる部署や担当が出てきます。
一方、大きすぎると一体感やスピードが損なわれ、重複や無駄も増えていきます。トップのメッセージは、50人の会社なら全体朝礼で話せば伝わります。しかし、5000人の会社で同じことはできません。効率を重視してオンラインや動画でやろうとすると熱量が下がるし、見ない人も出てくる。効果を重視して拠点ごとにやろうとすれば、50人なら30分で済むことに経営者の厖大な時間をかける必要がある。しかも全体に伝え終わるまでのタイムラグも相当ある。
組織を小分けにするアプローチの場合、まずは「大きすぎて非効率なのでは」と考えます。組織が過大だから、その事例が当てはまらないのかもしれないと発想するわけです。その上で、どう分ければ体力・スピード感・効率のバランスがとれた適正なサイズになるかを検討します。
問題のある会社を改革する際も、私はこのアプローチを取ります。これは三枝匡さんという素晴らしい経営コンサルタント(いまは凄腕の経営者)から学びました。
三枝さんは「組織が大きすぎるのはよくない。大きいままにせず、どんどんサイズダウンしていって、リーダーの自覚を持てる人たちをそれぞれ適正な規模感の組織のトップに置いていった方がいい。でっかい図体にトップが一人だけでは、後の人の当事者意識が薄まってしまう」という趣旨のことをいろいろなところで言われています。よかったら三枝さんの著書も読んでみてください。
大組織が有利なら大組織で、不利なら小組織に
デカすぎる図体は機敏性を失う
経営者の観点から見て、大組織の体力・大きさを活かす方が有利なら、もちろんそのスケールメリットを活かすべきです。
しかし、大組織のままでは不利な状況やターゲットに対しては、バーチャルに分割できないか、一部分だけ動かせないかなど、組織を小分けにする発想も持っていなければいけません(実際に分けるかどうかは別として)。
「大企業は大企業のまま」という、前提を動かさない思考は硬直的で柔軟性が足りないと思います。
同じ大企業でも、利点・難点を比較しながら意図的に大きくしたのではない会社はさらに切実です。売上や機能上の必要にかられて肥大していっただけなのであれば、それこそもっとマネジメントしやすい、あるいはリーダーシップを発揮しやすい単位に分けていかないと、「大企業病」に陥ります。
船でも人間でも、デカすぎる図体は機敏性を失っていきます。先述の通り、大きくなればなるほどトップのメッセージ一つ伝えるにも手間と時間がかかる。受ける側
も、10人しかいない組織で「2年以内にこの新事業を軌道に乗せよう」と言われるのと、10000人の組織で言われるのとでは、その重みも受け取り方もまったく違いますよね。
大きい組織では「どうすれば事例がうまく当てはまるように自分たちの組織を調整できるか」から発想した方が、活かせる事例は増えます。それ以外の部分、特にリーダーの育成・当事者意識を強めるという観点でも、小分けにしていく方が組織にメリットがあるのではないかと思います。
もちろん、デカいけれども中小並みに機敏なら最強です。ただ、そういう組織は多分、中小企業からたくさんのことを学んでいます。「ウチは大きいから」で切り捨てるのはもったいないですよ。
今日のひと言
「大企業には無理」は据え膳思考かも
「大企業・大組織には合わない」というのは、受け身発想・据え膳思考です。「ウチの規模に合う事例を持ってきて」「小さい会社の取り組みは使えない」という発言を聞くたびに、私などはもう少し攻めの姿勢があってもいいんじゃないの、と内心思っています。
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この記事を書いた人

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。