コラム
「何か質問ありますか」に「何か」言わない人は採用しない···かも【採用改革】
採用の失敗は育成で取り返せない。これは組織経営の鉄則です。私はもう20年言い続けてきました。とりあえず採用してから育成で何とかするのは無理です。
もちろん伸びしろがないとは言いません。しかし方向性が違う人材は、頑張って育成して伸ばしたとしても、伸びる方向が違っている確率が高い。やはりまずは採用。採用は育成よりも大事という前提で考えないと、組織づくりでずっと苦労することになります。
小島のnoteをこちらに転載しています。
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採用の失敗は育成で取り返せない
DACの採用面接
私の会社であるDACではここ数年、募集は常時かけていて、書類選考、一次面接、二次面接、私が入る三次(最終)面接と、毎週のように何かしら採用絡みの活動をやっています。これという人材がいたらすぐ声をかけて面接。それくらい採用を重視しています。
最終面接では、終わりが近づくと私が口にするお決まりのフレーズがあります。だいたいこんな感じです。
今回が最後の面接。私はこの会社の最終責任者であり、会社に関するすべてに答える責任があり、また答える立場にもあります。
だから、聞きたいこと、気になること、いままでの面接で腑に落ちなかったことなど、何でも聞いてください。DAC以外のことでも、私でコメントできることなら何でも答えますよ。
「何かありますか?」「ありません」「じゃ、これで終わります」というクロージングのための儀式ではなく、本当に聞きたいんだというこちらの気持ちが伝わるように、意識して丁寧に話します。
聞かれた方が緊張したり、すぐに「特にないです」と答えたりしないように、私は意図的にゆったりと構えて、相手の方をじっと見たりせず、書類を触ったりしながら待ちます。
できるだけ感じていることや考えていることを引き出したいという意図なので、変なプレッシャーがかからないように、でも、ちゃんと考えて答えてねという思いが伝わるように、その場の空気をつくります。
面接者の回答パターン
「急ぎませんよ」という雰囲気を出しながら少し待っていると、おおよそ次のような反応が返ってきます。
「御社のホームページにこう書いてありましたけど、どういう意味ですか」「**はどういう業務ですか」など、自分で事前に準備してきたことを質問する人。
「他の面接官にこう言われたが、小島さんから見てどうですか」など、一次、二次の面接時に聞いたことを改めて確認する人。
これと似たパターンで、「さっきの話をもう少し具体的に聞きたい」というように、今日の受け答えの延長で深堀りする質問もあります。
「質問ではないんですけど」と前置きして、自分の感じたことを話す人もいます。仕事に対する想いとか、会社との相性についてなど、内容はいろいろです。
もちろん、「特に何もありません」と答える人も一定数います。
面接は効率より効果
「ありません」だとそこで終わりですが、ここから話が弾んで、1時間近く話し込んでしまうこともあります。質問に答えているうちに興が乗り、私が長話することも……。
採用担当者たちはそのへんをよくわかっているため、最終面接のスケジュールにはかなり余裕を持たせています。直後に対外的な仕事は入れないし、1時間刻みで何人も連続して面接を組んだりはしません。
やっぱり面接は効率より効果だと私は思います。一次、二次は数もこなさなけばいけないので、なかなかスケジュールを伸び縮みさせるわけにいきませんが、トップが最終的に見極めるような段階で、面接をただの儀式として終わらせるのは非常にもったいない。
採用の失敗は育成では取り返せないということは、採用での成功は育成を不要にするということです。経営全体への負荷とコストを考えると、経営者は自分が最後に見極める面接にはもっと時間と意識を割くべきです。
「質問ありますか」への反応に注目する理由
「質問ありますか」で見ているポイント
さて、「何かありますか」の段階で私は何をしたいのか。求めている正解があって、それに到達することを期待しているわけではないです。どういう反応があったとしても、それはそれで構いません。
具体的に見ているポイントはこんな感じです。
①DACへの興味
日本と違って、中国では面接突破マニュアルみたいなものはあまり流通していません。日本よりずっと素の状態で、特に事前準備なく面接に臨んできます。
私はむしろその方がいいです。DACでは準備を全く重視しません。ウェブサイトを見たとか、私のYouTubeを見たとか言われても、それだけで加点はしないです。
最終面接では、私から自社の特徴をはっきり話すようにしています。良くも悪くもDACの濃いところを紹介する。それまでの段階で「この会社とは波長が合うな」と思っている人は、私の話に共感を示し、興味が湧いたという意思表示をしてくれることが多いです。
逆に、「この会社は合わないかもしれないな。どうしようかな」と思いながら面接に来た人は、私の話を聞いて、ちょっと自分には難しいと判断するようです。
②正直さ・率直さ
ここで率直な質問を投げられる人は、正直だなと思います。「一次面接で定時に帰れる仕事ではないと聞いたけど、実際どれくらい忙しいですか」「コミュニケーションが大事だと言われたが、私は人付き合いが苦手です」「仕事のプレッシャーがきついそうですが、ノルマみたいなことですか。どんなプレッシャーなのかもう少し説明してもらえませんか」などなど。率直な人は基本的に好印象です(率直すぎるのは困りものですけど)。
③こちらの話への関心
会社への興味はともかく、私が話した内容や、一次二次で他のメンバーが出した話題について聞いてくれるのも嬉しいです。仕事に関係ない話や振る舞いに関心を持って、「あれはどういうことですか」と聞かれると、やり取りの中でこちらに関心を持ってくれたことがわかります。
④こちらの意図を汲み取れるか
私が「何でも聞いてください、ゆっくり待ちますよ」という態勢でいることで、「あ、ここは何か答えた方がいいな」と察するかどうかも見ています。こちらの意図、やり取りの流れをつかめるかどうかですね。
⑤何とかする力を発揮できるか
こちらの意図を察した上で、何も準備してなくて、特に聞きたい質問もないんだけど、その場で頑張って何とかしようとするかも観察しています。多少トンチンカンでも、頑張ってひねり出そうとする姿勢を見せてくれると好印象です。
この局面であまり考えもせず「何もないです」と即答されてしまうと、私としては物足りなさを感じます。この受け答えだけで合否を判断することはないですが、「どうしようかなぁ」と迷っていた場合は、ここでオファーを出すか出さないか自分の判断が決まることもあります。
面接を突破する人が備えている力
どれかは持っていてほしい
DACの面接を突破する人が備えている力をまとめると、まず質問力。それから瞬発思考力。準備のない状態で、今この場で考えなければいけない時に対応できるかどうかですね。それからこちらの意図に対する感応力や推察力。そして多少無理があっても質問やコメントをひねり出し、何とかしようとする姿勢があるか。
全部を備えている必要はないものの、結果的に採用になった人はどれかは持っています。
なお、私が採用面接で確かめたいのはその人の「人となり」であり、会社のカラーにフィットするかどうかなので、きっちり準備して最初から最後までカチッと固めた回答をする人(中国では珍しいですが)は、DACでは通らない傾向にあります。
最後の最後にこういう局面を設けるのは、最終責任者の私の見極め機会、最後の確認作業に使うためです。ほぼ採用を決めている人に対しては、この段階の反応を見て「うんうん、やっぱりいいね!」とゴーサインを出します。逆に採用を迷っている人は、ここでの受け答えでそのまま見送ることもあります。
(内緒ですが、それまで見送りに傾いていたのに、「何かありますか」の後ですごく盛り上がり、オファーを出そうかと思うところまで評価が急上昇することもあります。ただ、そこまでの流れが見送り判断だと、やっぱり最後の最後は見送ることが多いですが)
今日のひと言
合格する人はやっぱり応える
振り返ってみると、過去にオファーを出した人で、最後の問いかけに「特にないです」とだけ答えた人はいませんでした。みんな何かしら反応しています。
「採用の失敗は育成で取り返せない」という前提で、今日の話が採用力を高めていくためのヒントになればと思います。
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この記事を書いた人

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。