コラム

違いはどこに? 「ブレない人」と「変われない人」

2025年09月19日
中国駐在…変化への適応さもなくば健全な撤退

敬意を込めて「あの人は一貫している。ブレない」と言われる人がいます。その横で「いつまでも過去の発想や成功体験を手放せず、変われない」と残念がられる人もいます。「ブレない人」と「変われない人」は何が違うのか。それとも置かれた環境が違うだけで本質は同じなのか。一緒に考えてみませんか。

毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
小島のnoteをこちらに転載しています。

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「変われない」と「ブレない」の違い

坂本龍馬を「ブレブレだ」という人はいない

同じように一貫した姿勢なのに、あの人は芯があると認められる人もいれば、あの人は変われないと呆れられる人もいます。この違いがどこから来ているのか、気になったので考えてみました。「変われない」と「ブレない」の違いですね。

逆から考えるとわかりやすいかもしれません。行動が一貫していないにもかかわらず、ブレてるとは言われない場合です。

例えば、坂本龍馬を「ブレブレだ」という人はあまりいないんじゃないでしょうか。初期は武士として免許皆伝の腕前で、次第に刀は役に立たないと言って拳銃を使うようになりました。その後、武力だけに依存していてはダメだと西洋の法律書や政治思想を学んでいきます。

刀から拳銃、そして法律書という有名な逸話は後世の創作だそうですが、坂本龍馬という人を表しているという点では、完全なるフェイクでもないようです。思想の上でも尊王攘夷から倒幕派に変わったわけですから、かなりの変節ですよね。それでもブレブレとは言われない。この辺りにヒントがあると思います。

Why やWhereが明確で変わらない=ブレない

私なりに考えてみた結果、ポイントはWhy(何のために)・Where(どこに向かって)だと思います。「なぜ変えるのか(変えないのか)」や「どこに向かうためなのか」が明確で一貫していれば、言動が変わっても変わらなくても「ブレない」という評価になる。

創業100年の和菓子店を想像してみてください。伝統の製法を守りながら、ずっと同じ菓子を作り続けている。商売で大事にしていること(Why やWhere)を変えず、言動も変えない。こういう姿勢を人は「ブレない」と感じます。

一方、やっていることが変わっても、Why やWhereが変わらない場合は、やはり「ブレない」と言われます。坂本龍馬はあれだけ言動を変えたのに、「この国をよくするため」という根底の信念は変わらなかったからこそ、後世の人を惹きつけるんだと思います。

つまり、「ブレる」「ブレない」は、やっていることが変わるかどうかでは決まらないことが分かります。

WhyやWhereが変わる/見えない=変われない

逆も検証してみます。WhyやWhereがどんどん変わっていく人や、はっきりしない人だとどうでしょうか。

前者はわかりやすいですね。WhyやWhereが変われば、それに連れて言動も揺れ動きます。そりゃブレブレと言われても仕方ないです。

WhyやWhereがはっきり見えない人はどうでしょう。実は一貫したWhyやWhereを持っているのかもしれませんが、周囲には分かりません。その結果、言動を変えると「ブレている」ように見え、変えないでいると単に「変われない人」と思われます。どちらにせよポジティブな印象に与えられないようです。

例外:WhyやWhereが自己利益追求の場合

ここまで考えて、例外があることに気づきました。WhyやWhereは一貫しているけれども、それが自己利益の追求の場合です。

とにかく自分が得をするためという点では首尾一貫している。こういう人は、やっていることが変わっても変わらなくても、信頼されない気がします。自己利益追求のためにずっと同じことをやっていれば「相変わらず残念な人」、言動がコロコロ変わる人は「変節漢」だと思われるでしょう。

「ブレない人」と「変われない人」の違いが見えてきました。

・WhyやWhereが一貫していること。
・周囲からそれが見えていること
・WhyやWhereが自己利益でないこと。

これらを満たしていれば、たとえやっていることが変わったとしても周囲からは肯定的に受け止められ、「ブレない」という評価が与えられます。そうでない人が同じことを繰り返していると「過去の成功体験を手放せない」「自分のやり方に固執する」といった評価になりがちなようです。

今日のひと言

自己利益を超える一貫したストーリーがあるか

自己利益を超えたところに一貫したストーリーがある人は、言動が変化する・しないにかかわらず、周りの人から認められます。一貫したストーリーのない人、一貫して自己利益ばかり追求している人は、残念な評価を受けてしまうようです。

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この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。