コラム

研修で海外赴任する人へ。トレーニー時代にしかできない経験とは?【中国駐在】

2026年02月16日
中国駐在…変化への適応さもなくば健全な撤退

今回はトレーニーとして中国(海外)駐在する人に、赴任期間をどう過ごすかについて私なりの助言・エールをお送りします。手元の仕事をこなすより、経営者や管理者の立場ではないからこそ挑戦・経験できることを存分に味わってみませんか。

毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
小島のnoteをこちらに転載しています。

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今の立場「だから」できることを

挑む課題やミッションがない……

研修生の立場で赴任している人から、「特に趣旨・目的・狙いを告げられずに現地に来てしまって、自分でも困惑している」といった話を聞くことがあります。

「これで結果を出してこい」という明確な課題もなく、いったい何のために赴任するのか、意外にミッションが曖昧だったり、周囲の扱いが微妙だったりして、現地での立ち位置が難しいと感じるようです。

ここで、今の立場「でも」できることを考えて周囲のサポートに徹していてはもったいないです。せっかくですから、今の立場「だから」できることに時間を使いませんか。

部長・工場長・総経理クラスとの違い

トレーニーと、上の立場で赴任する人では何が違うのか。まず責任が軽いです。それから明確な立場があるわけではない。暇ではないにしろ、総責任者に比べれば時間はある。そして現地業務の経験は浅いです。

特に若いうちは、成功体験や固定観念がないため、現地で見たことをそのまま素直に受け入れる感性を持っています。40代後半や50代の赴任者だと過去の蓄積があり、どうしても「アメリカでは」「日本では」と自分の体験を引き合いに出してしまいます(そして「それに比べて中国は」と続けてしまいがち)。そういう思考の癖がないのは強みになります。

つまり、トレーニー時代には「責任が重く、立場があり、忙しい人には無理なこと」をやっておくのがおすすめです。本業や目の前の課題に振り回されている人たちにはできないことを積極的に経験しておいてください。

トレーニー時代にやっておくといいこと

①横から中国人社員を観察する

総経理の立場で来てしまうと、中国人社員をフラットな立場で観察することはできなくなります。向こうだって偉い人の前では身構えますからね。でもトレーニーの立場で年齢も近いと、相手もあまり背伸びせずに接してくれて、素の状態を見ることができます。

②同じ立場で中国人社員と付き合う

一緒に食事をする、どこかに出かけるとなっても、総経理の立場では社員が手配してアテンドする感じになってしまいます。これがトレーニーなら、対等な立場で一緒に遊ぶことが可能です。普段の社員たちの話しぶりや行動に触れられて、彼らの素の姿に対する理解がより深まります。

③下から中国人幹部を観察する

中国人上司や幹部を下から観察できるのも貴重な体験です。上の立場の赴任者には絶対に見せない顔を見ることができます。「彼らの目には日本人赴任者はこんなふうに見えているんだな」「総経理がいる時といない時の振る舞いにはこういう違いがあるのか」といったことを知れる機会は今だけかもしれません。

④中国人の行動原理を学ぶ

社内外を問わず、中国人の行動原理を学ぶことができます。日本本社・日本人総経理・本部長から大号令がかかった時、中国の人たちがどういうふうに動くのか、どんな時に動き、どんな時に動かないのか。号令をかける立場になれば、なかなか余裕を持って観察することはできません。責任を直接負っていないからこそ、冷静にゆっくり分析できます。

⑤教師・反面教師として上司のやり方を観察する

日本人でも現地人でも、拠点にはさまざまなタイプの上司がいます。彼らの行動を観察して、教師・反面教師にしてしまいましょう。それぞれ部下に受けること、受けが悪いこと、みんなが集まってくること、心が離れること、いろいろやっていると思います。それを教材として集め、自分が上の立場で赴任した時には「この手を使おう」「これはやめておこう」という心づもりをすることができます。

⑥言葉を鍛える

ここからは仕事以外のことに移ります。まずは言葉です。やはり外国語は記憶力・好奇心が旺盛で時間の余裕がある若いうちでないとなかなか身につきません。研修で現地の語学学校に通えるだけでなく、同僚とご飯を食べに行くような機会もたくさんあるため、コミュニケーションのチャンスを逃さないだけで会話はぐんぐん上達します(私にも経験があります)。

上の立場で赴任すると、日本人部下や本社、あるいは他社の経営者とのやり取りが増え、よほど工夫しないと外国語の力を鍛える環境は作れなくなります。トレーニーのうちなら、現地の言葉を使う機会には事欠きません。

⑦現地のおいしい物を食べる

上の立場になればなるほど、お膳立てしてもらった宴席ばかりになり、若い子の間で流行っているレストランやB級グルメ、屋台やジャンクフードを自由に楽しむわけにはいかなくなります。トレーニー時代にはぜひ食べ歩きをしてください。

日本人があまり知らない現地のローカルフードを知っていると、将来違う立場で赴任した時に、現地社員との距離を一気に縮めることができます。「あれ、まだある? また食べたいな」「よく知ってますね! かなり辛いでしょう」「若い時によく食べてたんだよ。癖になる味だよね」みたいな話ができれば、相手の親近感は高まります。

また、日本や他国から来た人の接待などで、高級ホテルの高級レストランに飽き飽きしている人たちに特色のある地元料理を提案できると、話が弾むきっかけにもなり、「この人は現地のことがよく分かっている」と思ってもらえます。

⑧現地であちこち旅行する

旅行も心と時間の余裕がないとできないことの一つです。激務でもなく、大きな責任もない今のうちに、どんどん外へ出ていって、いろいろなものを見たり聞いたりしてください。言葉も学べるし、現地の文化や習慣、暮らしも見ることができ、話のネタに困らなくなります。

⑨ぶらぶらする・遊ぶ・暇なら読書やカフェ巡り

私は知らない街に行くと、気に入った雰囲気のいいカフェに座って、ずっと周りを観察しているのが好きです。

小さい子供がグズりだしたが若いお母さんはどう言ってあやすんだろう、恋人らしき二人は何を注文するのかしら、この街では珍しいスーツ姿だけど出張者かな、などなど、眺めているだけでいろいろな発見があります。

立場がある赴任者だと、平日は当然仕事だし、週末はゴルフ、夜は宴会やパーティと、なかなか一人で暇を持て余すことはなくなります。周囲が放っておいてくれる立場だからこそ、自由に異国をぶらぶらできる。これは本当にトレーニー時代でないとできないことかもしれません。

今日のひと言

真面目に手元の仕事をするよりも

上役には内緒ですけど、重い課題を背負うことなく、単に「現地に慣れてこい」ということで送り出されたんですから、トレーニー時代は真面目に手元の仕事を探そうとしなくても大丈夫です。

そんなことより、せっかく管理職ではない立場で赴任するなら、今だからこそ学べる現地の現物、人々の営みや言葉に触れることに時間を使ってください。ここで吸収したこと、培ったことは、必ず将来の財産になります。

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この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。