コラム
「面白くない」から「やらない」のではない 後
前回は、私がお守り役をしている家庭菜園のオクラの話でした。あれを書いてから一か月経った現状、今年はすべての野菜が無事に収穫できました。トウモロコシ、ミニトマト、きゅうり、ピーマン、オクラ。一つもダメにせずしっかり収穫できたのは初めてです。運もあるでしょうが、今年は昨年までより手間をかけたという自覚があるので、「なぜ今年はうまくいったんだろう」とは思いません。やっぱり手間をかけると違うんだなぁと感じているところです。
さて、どんなことでも、手応えを感じたり結果が出たりすると、だんだん楽しくなってきます。子供の習いごとなんか顕著ですが、大人も一緒。今年の私もまさにそうでした。苗木のころの観察を丁寧にするようになったのは、昨年、オクラを枯らしてしまった悔しさがあったから。オクラが育たない理由を発見したのは、たまたまでしたが、何とか原因を突き止めようと観察している最中のことだったので、去年までの私であれば発見できなかったでしょう。そこから水まき、支柱のメンテ、脇芽取りに追肥。丁寧に育てながら観察すると、日単位でぐんぐん生長することに気づくので、育てがい、面倒の見がいがある。やる気が上がるので、面倒がってきた草取りや下枝の始末もやってみる。すると見た目もさっぱりして、よけいに達成感が増す。今年は収穫もそれに至るプロセスも充実感、達成感がありました。
こうなると、人間、調子に乗ります。これまで妻から「ハーブを育ててみたい」と言われても生返事だったのが(正直、面倒くさい)、今年は野菜で弾みがついているため、その気になって苗を購入。摘んだ葉でハーブティーをつくったりパスタにバジルを乗せたりすると、実利も感じるので楽しくなる。結局、七種類くらいのハーブを育てています。嬉々として水を遣ったりしているのは私。40年以上、土いじりを敬遠していた自分が、こんなことになるとは、自分でも驚いています。
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自分の実体験から言いたいのは、社員の仕事への態度の話。「面白いからやる」「面白くないからやらない」というのは、よくある話ですが(面と向かって経営者に言ったりはしないでしょうが)、これらは当たり前のように見えて間違っています。経営者はこんな状態を黙認していてはダメです。
経営者としては「やってみないと面白さは分からない」「やれるようになると面白くなる」と考えるのが正解。そして、上手くやれるようになるまで、手応えを感じるようになるまでは、そっと支援します。面白さや達成感を感じるようになったら、もう支援は不要。放っておいても自分で勝手に進めるでしょう。今年の私のように。
気をつけるのは、あまり無理強いしないこと。強い拒否感や反感を持つようになったら、「やってみる」気持ちが生まれないため、前には一歩も進めなくなります。私も家庭菜園のお守りを始めてから面白さを感じるまで4年以上かかりました。焦らずやりましょう。
2022.07 Jin誌
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この記事を書いた人

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。