コラム
「駐在員に丸投げ」問題の解決策【中国駐在】

海外法人のマネジメント問題は二極化しがち。一つは「現地社員に任せきり」、もう一つは「現地管理者が育たない」です。今回は後者を中心に、駐在員が目を光らせてきた結果、現地管理者が本来の職責を果たさず、シビアな話は駐在員に丸投げしてしまうという状態をどう脱するか考えます。
小島のnoteをこちらに転載しています。
───────────────────────
「駐在員依存」と「現地社員任せ」
それぞれの課題を整理する
現地マネジメントは、「駐在員に丸投げ」と「現地任せ」に二極化しがちです。完全に駐在員に依存して、案件も日本人同士で話をつけていたり、業務の要所は駐在員が回していたりする。逆に何もかも現地社員任せになっていて、本社どころか駐在員も手が出せない。このどちらかに極端に振れることが多く、バランスが取れていることは少ないです。それぞれの問題点を見ていきましょう。
駐在員依存=ボトルネック
現地任せ=ブラックボックス
駐在員に依存すると、人の当たり外れ(失礼)で業務が左右されます。前任者が急遽帰任せざるを得なくなった時など、後任の腕次第で現地マネジメントが大きくブレます。また、どんなに優秀な人であっても、展開する拠点の数や規模が大きくて駐在員の数が足りなければ目が行き届かなくなります。駐在員が業務のボトルネックになるか、現地社員任せになってブラックボックス化し、企業統治や利益保護の観点から問題が出てきます。
駐在員依存=成長・自立促進策
現地任せ=健全性確保策
駐在員依存を脱却するためには、いかに現地の社員たちの成長・自立を促すかを考えなければいけません。逆に現地任せになってしまっている場合は、どうやって健全性を確保するか、不正の防止策を打つかがカギになります。どちらにしても、何らかの取り組みをしないと拠点の健全な発展・維持は難しいです。
駐在員依存=手間と時間
現地任せ=自前・継続困難
現地社員たちの成長・自立を促すには手間と時間がかかります。相手が根負けするまでずっと追いかけていかないと、なかなか人は育ちません。現地拠点に限らず、本社だって3か月や半年で人材は育たないですよね。
一方、いったん現地社員任せになってしまえば、不正や企業統治上の問題発生を自社で抑止し続けるのは難しいと思います。20年以上、海外拠点でトラブルに対処してきた私の結論です。
外からの強制力と仕組みがあり、現地社員にも駐在員にも依存せずに仕組みが回り、日本の統括側が変わっても回り続けるようにしていないと、どこかで隙が生まれます。
++
ずっと不正のモグラ叩きをやってきて実感しますが、現地任せにして問題が発生した時のダメージの大きさを考えると、駐在員依存の解決に挑戦する方が健全だと思います。
どちらか選べるのであれば、目指す方向は日本または駐在員による企業統治。最終的には、日本の価値観・文化と、株主・グループ全体の利益を守るという観点を入れつつ、現地拠点の日常管理とマネジメントは現地管理者たちが自立して回している、この組み合わせを成立させるのがベストです。
駐在員丸投げからの脱却
駐在員側の挑戦
現場が駐在員に丸投げになってしまっている場合、どう脱却するか考えてみます。これには現地側での挑戦や取り組みだけではなく、駐在員・日本側の挑戦も不可欠。「駐在員側の挑戦」と「現地社員の挑戦」、どちらが欠けても成立しません。

駐在員側の挑戦
駐在員・日本側は、現地の管理者に課長や部長という肩書きを与える時、どういうことを求めているのか、本当に相手が理解するまで伝えているでしょうか。「こういうことができれば担当者、班長、課長、部長として自立しているとみなす」と明確に示すことは駐在員側の仕事です。
そして、管理者として自立し、課長・部長としての本来の役目を果たしたらどう報われるか、はっきり示していますか。自立していない人と自立している人では何が違うのか、自立したら得なのか損なのか、誰でも分かるようになっていますか。
公正な仕組みとして示すだけでなく、実際に運用していますか。評価、処遇、登用、任免において、自立している人としていない人で違いを出しているでしょうか。
いくら仕組みがあっても、運用で丸まっていたり、ナァナァになったりしていると、現場は動きません。やってもやらなくても変わらないんだったら、ごく当然の反応として「別に頑張らなくてもいいや」と思います。
ライン長とは、本来、果たしてもらう役割=責任があり、それを遂行するための権限が与えられ、その仕事の価値や負荷に見合った処遇を受ける人たちのはず。この順序を明確にしていないと、本人たちは肩書き=権益や面子程度の理解をしてしまいます。
こうした点は、現地社員ではなく駐在員側・日本側が挑戦しなければならない課題です。

現地社員側の挑戦
駐在員側も挑戦するという前提で、現地社員たちに何を求めていくか。まずは「自分が今のポジションで何をすればいいのか」「なぜそれをやらなければいけないのか」を本当に理解してもらうところからです。理解できていない状態で何をやっても意味がありません。まず理解です。
次に、頭で分かっていても実際にやれるかは別問題ですから、駐在員の伴走の下で、それに挑戦してもらうことです。教える側は、やってみせ、言って聞かせて、させてみて…を愚直に繰り返す必要があります。
そのうちに、能力的・スキル的にはできるようになります。ただ、これで終わりではありません。誰も見ていなくても自分だけでできるか、少し変わったシチュエーションでも自己判断で切り抜けられるかは、また別の話です。
このステップを踏んだ後に、駐在員が陰からフォローしたり管理したりしなくても大丈夫、多少は目を離しても任せられるというレベルに到達すれば、自立したと言えると思います。
さらには、彼らが自分の言葉で、部下の指導・支援までするようになれば、もう一人前の管理者です。
シーンで見る人材育成「本社との折衝」
現地人材がどのように自立していくのか、具体的なシーンで見てみましょう。海外拠点だと「本社との折衝」は駐在員に丸投げされることが多い領域だと思います。
これは、社内や現地取引先との交渉とはポイントが異なります。日本本社側に何かを認めてもらうには、現地拠点と本社との立場の違い、現地と日本のビジネスにおける見方の違いを理解することが必要になってきます。
どこをどう押さえれば説得力が増し、本社としてすっきり納得できるのか。例えば折衝のための資料なら、冒頭に何を書くか、どんなデータを添えるか、最後はどう締めるかといったことです。これは頭では分かっていても最初はなかなかできません。
本社との折衝ができる人材を育てるには、まず交渉に必要な情報を集める、あるいは活動して検証する、それを資料にまとめるところまで、最初は駐在員も一緒に手を動かします。
次は報告です。本社の人たちの前でプレゼンテーションをし、質疑応答に対処する。最初は一緒に、そのうち見守られながら一通りやれるようになり、いちいち相談しなくても進めるようになってきます。
だんだんフォローを外していけば、気づいた時には日常業務のPDCAで必要なことは自分で本社と折衝しながらやれるようになっているはずです。いつしか本社からも「彼女は自立できてるね」「彼はすごく頼りになるよ」といった声が聞こえてくるようになります。
こうした段階を踏まずに、「現地管理者が自立できていない」と嘆いても、それは駐在員や日本側の怠慢です。
現地社員が方法と意味を理解する、見守られながら挑戦する、やり方を習得する、「この方が業務が回りやすいし周りの評価も高い」と納得して定着する。順を追って伴走し、どこかでつまずいていたら、そこに立ち戻って、また引っ張っていく。ここまでやれば丸投げから脱却できます。
なぜ駐在員に丸投げするのか
丸投げの原因を潰せば、資質のある人は自立する
少し話を戻して、なぜ現地社員は駐在員に丸投げしてしまうのか、改めて整理してみます。
なんだかんだ言われながらも、それで済んでいる。これは大きいです。
日本人駐在員が最初から「中国だから」と諦めていて、週末などに自分で片付けていると、本人たちに当事者としての自覚がないこともあります。
これは現地社員のせいではありません。自分たちの仕事だとも言われていない、できていないことへのフォローもないのであれば、「あれは駐在員の仕事なのね」と思われても仕方ないです。
それから、「やりなさい」と言われても、どうやっていいか実はよく分かっていないこともあります。駐在員としては「何回も言ったのに」「何回もやってみせたのに」と言いたいでしょうけど、分かっていないものは分かっていないんです。
「分かれ!」と命令することはできませんし、「なんで分からないんだ!」と責めたところで分かるようにはなりません。やはり相手が分かるまで、こちらがアプローチし続けることです。
また、自分でやることのメリットが見えないという場合もあります。
これは最初は処遇やポジション、外からの動機づけで釣ってもいいかもしれませんが、やってみたらすんなり認めてもらえて、周囲の評価も上がったと本人が実感できる演出が肝心です。いちど味をしめれば、わざわざごほうびを用意しなくても勝手にやります。
++
丸投げの原因を潰していけば誰もが脱却できるかというと、本人の資質や能力の問題もあり、皆が同じように自立するわけではないかもしれません。
ただ、どこの国に行っても、現地社員の自立を目指すのであれば、こういう作業をしなければなりません。逆に言えば、こういう作業をすることで、資質・潜在能力のある人たちが自立していきます。実際に自立して回せるようになった人たちを私も見てきましたので、理屈ではなく体験談としてお伝えします。
ここまでやっても自立が難しい人たちは、残念ながら適性がないかもしれません。この場合は適材適所の異動や健全な新陳代謝といったことも考えていきます。
今日のひと言
丸投げになるのはそれを認めているから
現地社員が駐在員に丸投げするのは、結局のところ、日本側がそれを許しているからです。
このままではダメだという危機感を持つのも日本側なら、脱却に導いていくのも日本側。現地社員の自覚と努力以前に、仕掛ける方の努力・工夫が欠かせません。
今回ご紹介した観点で、ぜひ丸投げからの脱却に取り組んでみてください。「OKY(お前が来てやってみろ)」も大歓迎。どこの拠点でも行きますよ!
経営者目線のディープな話をほぼ毎日配信中
中国事業の最前線から、ビジネスに関する時事ネタや
情報・裏話などを無料でお届けしています。
この記事を書いた人
多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。