コラム

初任給は上げたのに採用方針は10年前のまま…物足りない人材が集まる会社はまず「採用OS」の更新を!

2026年06月19日
中国駐在…変化への適応さもなくば健全な撤退

多くの日本企業の人材採用は、根本的で重大な課題を抱えています。人類の発展の歴史を考えれば、下の代ほど優秀で当たり前。どんどん優秀な人が入って新しい時代を創っていくのがあるべき姿なのに、現状はどうでしょう。理想から大きく乖離しているなら、採用の根本を見直すべきです。

毎週水曜に配信するYouTube動画のテキストバージョンです。
小島のnoteをこちらに転載しています。

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今の若手に満足ですか?

みんな優秀、だけど……

最近、自社に入ってきた若手を見て、どう思っていますか。「特に違和感がない」「自分の競争意識を刺激されるようなスケールの大きな人材もいる」「学ぶ姿勢、相手に対して『開いて』いるか、知らない世界への好奇心、挑戦や成長の意欲、どれをとっても素晴らしい」。

そう感じているなら、これより先はまったく読む必要がありません。でも、少しモヤモヤしているのであれば、掘り下げて考えてみませんか。

先輩や上司に最近の若手について尋ねると、「頭はいい」「優秀だ」という答えが返ってきます。そして、「だけど……」と続きます。

どんなところが「だけど」なのか。例えば、タイパをやたら重視する。それも若者特有の近視眼的なタイパなので、先輩から見ると「そんなところでタイパを重視しても、自分のキャリアのためにならないのでは…」と感じる。

定時を過ぎた瞬間に自分のスイッチを切ってしまい、自分の担当範囲で何か起きてもおかまいなし。ましてや客先、取引先、他の部署で起きていることは自分に引きつけて考えられない。残業をいかにして回避するかに汲々とする。コミュニケーションは最低限にして、雑談や会議、報告、相談もできるだけ避けたい。

さらに、採用時から海外市場がメインの会社だといっているのに、上司に「自分は海外に行くつもりはないです」と言い切る人。入社する前から転職サイトに登録している人も少なくないそうです。

ただ、こういう若手への批判を展開したいわけではありません。今回の主役は会社側。受け入れている先輩や上司への質問です。「率直に言って、彼らを本気で育てる気になりますか」。

チームを組んで背中を預けられそうな若手が思い浮かばないなら、やはり何かを変えなければいけないと思います。

採用>育成

これまで繰り返し「採用での失敗は育成では取り返せない」と話しているように、同じ手間や費用をかけるのであれば、育成よりも採用にかける方がはるかに合理的で費用対効果も高いと断言します。

まずは採用して、後は育成で何とかしようと思うかもしれませんが、「育成されること」自体を不本意に思っている若手もたくさんいます。

教わるつもりはない、教わりたいとも思っていない、そんな若手に対して「育成で何とか」は成立しません。また、今の会社は踏み台だと考えていて、2年ぐらい経ったら次のステップに行こうという人たちを育成している余裕はどの会社にもないでしょう。採用から見直さないと、入ってくる人は変わりません。

私が強調したいのは、必要なのは「優秀な人材」ではなくて「自社にフィットする人材」だということ。周囲から「すごい人を採ってるんだね!」と言われるような人材だとしても、半年で辞めたり、会社の未来を託すことはできそうにない、託されたくもない人たちだったりしたら、会社には全然プラスになりません。

「自社にフィットする人材」の見極め方

どんな人が自社にフィットするのか、最初に考えるべきは、理念・ミッション・共有価値観・文化といった会社が掲げる「旗」を理解し、共感してくれるかどうかです。

処遇や仕事内容には興味があっても、会社の文化には全然興味がない、むしろ会社のカラーに自分は合わないと思っている人材に活躍してもらうのは難しいです。そういう人がチームにいてはダメというわけではありませんが、そんな人ばかりだと機能しなくなります。

最初に「会社の旗」への共感があり、その前提で、事業に必要な能力、伸びしろ、適性などをクリアしているかを判断します。

能力や適性は、会社によってさまざまです。いずれは海外拠点で指揮をとることが必要な会社と、地元密着で海外進出なんて考えたこともない会社では求められる資質が違います。同じ会社でさえ、役割をきっちり決めて責任を果たしていくような部署と、センスとガッツで何でも試しながら突破していくカルチャーの部署では違うかもしれません。

だからこそ、適性・能力より共感。自社に合う人材を採用するためには、この順番が重要です。

採用OSの更新を

採用OS、95年で止まっていませんか

私は1996年に新卒で最初の会社に入りました。当時は就職氷河期です。人事部の人たちが「今年は東大から応募があった」「慶応の院卒が採れた」と色めき立っているのが、入ったばかりの私にも感じられました。

また、今は就活生の行きたい会社ランキングに入るような大手で50〜60代の人と話していると、「自分が入社した頃は、第一志望にするような会社じゃなかったんだけどね」と言われます。家から自転車で通えるとか、地元から出なくていいからとか、そんな理由で入った人たちばかりだったと。

それが会社の成長につれ、一流の国立大学や有名私立からも応募が来るようになり、素直に「嬉しい!」というのが90年代後半あたりの採用OSではないかと思います。失礼を承知で言うと、ブランド物を買えるようになって喜んでいる感覚に近いです。

スペック採用からの脱却を

ブランド大学からの採用が当たり前になった2000年代に出てきたのが、スペック採用です。

高学歴に留学経験、海外の大学を出た、博士号を持っている、3か国語ができる、難関資格を学生時代に取った、などなど。いわゆる「映える」活動、何かのチームでリーダーだった、学生起業して仲間と一緒に経営していたなどというのもあります。要はスペック=履歴書に書ける内容で選抜する。当時、ブランド重視からスペック重視の流れはあったと思います。

ここではやや批判的に語っていますけど、スペック採用自体が当時の採用OSとして問題だったかというと、そうとも言えません。

95年版OSの成立当時はまだ長期継続勤務が主流。新卒者も「合わないから」とすぐ辞めてしまうのはあまりよくないという意識でいたので、会社には猶予がありました。

2年目、3年目あたりまでは、「大変な会社に入っちゃったな」「やりたかった仕事とは違うな」と身の振り方を考えていた若手も、4年、5年と経っていくうちに、持ち味を発揮できる業務が見つかったり、仕事の意外な面白さを発見したりして、時間をかけて職場に染まっていくものでした。

新人教育もOJTがメインでした。経験が物を言う世界で、上司は答えを知っている。新人は話を聞こうという姿勢がある。そんな共通認識の下、OJTでゆっくり育成しても十分やっていけました。

また、当時はAIもありませんでした。今は先輩の話もすぐ調べられるため、「先輩、それ古いですよ」と言われたり、若手がAIを駆使して作った資料の方が、先輩がコツコツ改良してきた資料より客先の反応がよかったりということが普通にあります。先輩上司としてはなかなか厳しい環境です。

95年版の採用OSが成立した頃は、社会に出たら社会のルールをゼロから学び直す、いわば丁稚奉公が通用していました。だから、地頭がいい人、ガッツがある人を採用しておけば、そのうち能力を発揮するはずだという読みが成り立ったんですね。そういう時代には、ブランド志向やスペック志向も一定の意味を持っていたと思います。

そして現在、前提は大きく変わりました。さすがに95年版のOSで会社を動かすのは無理があります。そろそろ更新を考えませんか。

今日のひと言

採用>育成 戦略>活動

育成は採用に如かず」、それから「戦術は戦略のミスをカバーできない」。この二つの言葉でまとめにしたいと思います。

戦術や作戦活動における頑張りでは、戦略のミスは取り返せません。まず戦略を固めることで、その先の具体的な活動が決まります。同じように、育成可能な人材を採用できて初めて、その後の育成につながります。

自社の新入社員たちを見ていてモヤモヤするのであれば、どうやって育成していくか悩んだり、しょうがないと諦めたりするのではなく、採用を見直してください。ピンとくる人材は必ずいます。

「育てたい」「応援したい」「自分が学んできたことを伝えて、自分よりすごい仕事人になってほしい」と思える人材をいかにして採るか。作戦会議にはいつでも声をかけてくださいね!

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この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。