コラム

時代変化に適応する駐在員…部下に相談する

2019年08月20日
日本流が通用しない時代の組織経営

これを書いているのは四月下旬。書きながら気づきましたが、これを読まれる頃は、もう令和なんですね。新元号が発表されるまでは関心を持って待っていましたが、発表から改元までがあっという間で、まだ感覚が追いつきません。

昭和から平成に変わったとき、私は十五歳でした。新しい時代に入ったという新鮮な感じを持ちましたが、そのまま現在まで来てしまった気がします。いまさらながら、すでに三十年も経ったことに驚き、昭和の二倍も生きてきたことに深い感慨を覚えます。これから三十年経てば私は七十五歳。令和の時代に私は仕事人として世に残せることを集大成しなければなりません。平成元年にはなかった重みが、令和元年にはあります。書いていて気合いが入りました。

新任駐在員が社内で親近感を持ってもらうための工夫。前回は「ときには部下たちにご馳走してもらう」でした。

部下の相談に乗るだけではなく乗ってもらう

今回の話は前回と関連します。ご馳走をするだけでなく、してもらうというのは、一方通行な関係、上下を強く意識する関係を脱却する上で効果的です。同じように、部下の相談に乗るだけでなく、時々部下に相談することで、部下との距離を縮めることができます。

ただ、ここでお勧めする相談は、あくまで部下との関係強化を最大の狙いとしているため、次のような相談はあまり適しません。

□部下が引くようなプライベートの明け透け相談
□部下が答えに窮するような仕事上の重い質問・深い相談
□本気でアイディアがほしくて、意見をくれた部下に、「でもさ……」と何度も続けてしまう相談
□仕事人としての自分の器量に疑問符がつきそうな相談

例えば、「行きつけの飲み屋で気になる娘がいるんだけど、最近の中国の若い女性はどんなプレゼントが受けるかな」と女性部下に聞いてしまう(親近感のハードルをすでにクリアしていて、こちらの「俺は昼も夜も豪快系♪」キャラを受け入れてもらっているような場合は、別に構いませんが)。

または、自分の上司や日本側との確執をぶちまけ、ネガティブな話ばかりして「お前どう思う?」とやってしまう。

これらは、親近感を持たれるどころか、その前のハードルである「バカにされない」にも抵触しかねませんので気をつけてください。

まだ親近感や信頼感が確立できていない段階で部下に相談するなら、こんな感じです

(部署のリーダー格の部下に対して)「今期、本社からこんな指示が下りてきた。でも、昨年から定員減となった仕事を吸収すべくみんな奮闘してくれているのに、このタイミングでこんな作業を増やされたら、僕なら抵抗感あるよ、正直。だけど完全無視するわけにもいかないし……。どう手を抜こうか。あるいは、どう伝えたら、みんなある程度理解してくれるかな」

こういう相談であれば、リーダー格の部下の面子が立ち、敵を外に置く(本社)ことで自分は部下に寄り添っていることを示し、部下の回答に実効性があってもなくても、関係を強化するという目的に適います。

●駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●親近感を持たれる工夫
□毎日こちらから声をかける
□中国語読みで名前を呼ぶ
□カジュアルな店で食事会
□ときどきおごられる
□部下に相談する
□人によって態度を変えない
□仕事には厳しいが横柄ではない
□身なりも言動も清潔感

2019.05 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。