コラム

【広東・上海版】09.あえて新陳代謝を促す…解雇せずとも済む環境が目標

2023年06月20日
人事労務は海外経営の基礎

ここ何回か「あえて組織の新陳代謝を促す」というテーマに沿って解雇の話を書いてきました。日本人・日本企業はとくに解雇への抵抗感・拒否感が強いため、感情論ではなく客観視してほしくて、「あえて」解雇を後押しするような角度から書きました。

ただ、解雇はやはり最後の手段でもあります。揉めそうなケースの場合、弁護士や弊社のような外部の専門家に任せれば社内の負荷は相当軽減できます。それでも気力や神経を使うことは間違いありません。また、前回までの話を引っくり返すようですが、経営者・上司としては解雇に一定の痛みを感じてこそ健全だと思います。安易に解雇を多用したら、社員の心がすさみ、組織の求心力が失われていきます。

前回までの話と合わせて言えば、船から降りてもらうべき人は、やはり降りてもらう必要がある。ただ、辞めさせるにあたって、まったく痛みを感じないとしたら、それも不健全。採用での見極め、入社後の教育指導、試用期間や固定期限契約における適性判断、成長支援。これらが適切にできていたら、いまに至っての解雇という手段を採らなくてもよかったかもしれない。持ち味を活かし、良い面を伸ばし、課題を改善できなかったのは、我々の責任でもあるのではないか。……今後の採用・配置・育成における改善向上のためにも、少しはこういう自省をしておきましょう。

しつこいようですが、この痛みや自省は解雇の実施に際して持つものであって、解雇の決断を鈍らせたり先送りしたりする理由にしてはなりません。解雇は最後の手段ですが、非常手段や異例の処置ではありません。ここを間違わないようにしてください。

最後の手段を採らなくて済むようにするためには、解雇しなくても、船を降りるべき人が降りていく環境を確立するのが王道です。もちろん簡単ではありません。ただ、毎回解雇に使う気力・神経・労力と比べて、どちらがよいかという話です。

2022.01 Whenever広東、Whenever上海誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。