中国拠点で最近の日本人駐在員はどう見られているのか、貴重な現地管理者たちのホンネをインタビューしました。本稿は赴任直後〜1年目までの人たちを対象とした「ここがズレている・ここがダメだよ」集。なかなか聞けない生の声が大量に集まってます!
───────────────────────
今回のテーマを「新任者が無自覚に地雷を踏まないための注意喚起」に決めた後、日系企業で長年駐在員と付き合ってきた中国人管理職の皆さんに連絡を取り、「駐在員に共通の課題」「最近の傾向」などを尋ねてみました。私の経験や情報だけで整理すると偏りますし、話が古い可能性もありますし。
駐在員のNG行動集としてサラッとまとめるつもりだったんですが、いざ聞いてみると、想定外に本質を突いた指摘が出るわ出るわ。かなり濃くて耳の痛い話になったため、表面的なNG行動集ではなく「ここがダメだよ」集にテーマを変えました。
ボリュームが多く、端折って一回にするのはもったいない内容なので、「赴任早々編」と「本社・本質問題編」の二つに分けてお届けすることにします。今回は着任直後〜1年目までの駐在員向けです。
現地のルールは自分には適用されないと考え、勝手に治外法権化する。自己判断でルールを破る駐在員は、現地拠点の規律を確保する部署や管理者にとってすごく迷惑(こうした「率先垂範の逆」の行動をする駐在員は割と昔からいる)。
今の中国はとにかく便利。タクシーはアプリで呼べ、日系のコンビニやグローバルチェーンのレストランもあちこちにあり、オンラインで注文すれば何でも届けてくれる。しかも食事・予約・購入・支払いなど、スマホ一つですべてが完結。 これに全然ついていけない駐在員がいて、生活面の些細な用事ですぐ中国人部下を呼び出す。職場にいるときはともかく、朝や夜、週末にも連絡が来る。最初は仕方ないけど、いつまでも学ばないと「いい加減に自分でできるようになってよ」と言いたくなる。
中国の事業環境、生活環境、会社の主力メンバー、客先、サプライヤー、競合他社、法律など、前提が全部変わっているのに、10年前の武勇伝を語られても通用しなさすぎて困惑する。
「アメリカでは……」「ドイツでは……」「タイでは……」という話をされても、「ここは中国だけど?」としか思えない。今の中国はGDPでも日本を抜き、自動車などさまざまな分野で世界最大の市場・生産地になっている。文化的自信の高まりもあり、「他の国ではこうだ」と言われても響かない。
現地に合わせてやり方を工夫し、成功した例はゴロゴロしているのに、日本のルールや手法をかたくなに守ろうとする。日本的な発想をそのまま持ち込んでも今の中国の実務や現実には対応できない。日本流を押し付けられ、現地社員のやる気もなくなる。
昔の駐在員には型破りな人もいたのに、今は考え方が型にはまっていて、自己変革の意識が弱い。
もちろん最初から流暢に話せることは期待していないが、ひたすら日本語で押し通すのはちょっと……。少しは中国語を学ぼうとする姿勢を見せてほしい。そういうところが見えないと、現地でコミュニケーションを取る気がないんだなと思う。
勤続10〜20年のベテラン管理職から見ると、最近の若い駐在員にはかつての日本人にあった勤勉さがないように思う。
駐在員が若年化したせいもあるのか、本社への説得力が不足している。そもそも現地の意見や状況を丁寧に説明しようとしないため、本社に大切なことが伝わらない。
マネジメント経験が少ない。部下を持った経験がまったくなかったり、赴任のために付け焼き刃で管理職につけてもらっただけの人もいる。経験不足は本人のせいではないからしょうがないけれど、それにもかかわらず自分のやり方を押し通そうとするため、業務に影響が出る。経験不足の駐在員は高圧的に出るか、マネジメントを放棄するかの両極端。どちらに振れても現地は困る。
何かといえば「なぜだ(自分の知っている基準ややり方と違うぞ)」と詰問してくる。その都度、法律や政策を説明しなければならず、業務が停滞する。いまどき中国の主要な法律は日本語訳があるし、たいていのことは自分でも調べられるのに、自分で調べようとはしない。現地のやり方や背景を学ぼうとして好奇心から出る質問ならともかく、自分が馴染んでいる世界と違うというだけで頭から「なんで違うんだ」「なぜできないんだ」と詰め寄るのは勘弁してほしい。
++
こういう行動が続くと、部下もだんだんうんざりしてきて、報告を躊躇するようになります。結果、駐在員の耳に心地よい話だけを上げ、都合の悪いことや詰問されそうなことは隠すようになるそうです。
これは隠す方の問題なのか、それとも彼らに事実を隠すように仕向けている駐在員の問題なのか。上司側が工夫しないと現実は変えられませんよね。
「新しい赴任者がリーダー・上司に値するか」ということは、着任早々からかなり冷静にチェックされています。無自覚にNG行動をしてしまい、現地から厳しい目を向けられている駐在員は少なくないです。
とはいえ、日本と比べて海外は肩書きより実力重視。特に中国はその傾向が顕著です。裏を返せば、立派な肩書きがなくても、日本での経験が少なくても、中国語が苦手でも、他の面で「この人は尊重した方がいい」と思ってもらえる何かがあれば認めてもらえる社会でもあります。
赴任直後のNG行動で見切られないように、気を引き締めていきましょう。
中国事業の最前線から、ビジネスに関する時事ネタや情報・裏話などを無料でお届けしています。
多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。 事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。