コラム

02. 社内宴会・・・高度な駆け引きの場

2019年01月29日
人事労務は海外経営の基礎

新任駐在員の着任が続く時期。新任者にとって最初の関門の一つが社内歓迎会の「干杯」攻勢。あちらこちらの宿舎で、撃沈され、同僚や部下に担ぎ込まれる姿が目撃されます。

日本では「中国の干杯は一種の文化。酒が苦手な者にとっては大変だが、現地に溶け込む第一歩だと思って、がんばってくれ」といった引き継ぎや助言を受けて送り出されることが多いはず。

しかし、この助言は半分間違い。とくに社内宴会において、これを真に受けて撃沈されるまで無理してはいけません。むしろ、干杯攻勢を正面から受けて辛い思いをしていると、仕事に大きな悪影響が出ます。

そりゃぁ身体を壊したら仕事にも差しつかえるだろう、という話ではありません。社内宴会は、部下たちとの高度な駆け引きの場であり、場合によっては火花の散る戦いの場。新任者にとって歓迎会とは、最初に人物を試される品定めの機会なのです。

最初の干杯が終わり、少し食べておくかと顔を下げた瞬間、声を掛けられる。顔を上げるとそこにはグラスを持った社員の列が。最初は飲み干していくものの、だんだん辛くなる。途中で「ちょっと待って、人数が多すぎるから、何人か一緒に」と言っても「いやいやいや、さっきの彼らとは干杯できて、僕らとはできないなんて」などと言われながら、次々に干杯させられる。最後はもうろうとしながら潰される。

いやぁ噂には聞いていたけれど、さすがに辛いなぁ…などと苦笑している場合ではありません。彼らは明確に「酔い潰し」に来ています。そして、あなたの干杯の受け方、断り方、強く勧められたらどう応じるかまで観察しています。ここで「押しに弱い」などと見極められると、明日から仕事で足元を見られます。

そうやって社内飲み会のイジメ対象になってしまう状態を、私は「宴会のび太」と呼んでいます。

2018.05 BizChina誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。