コラム

11. 撤退は体力のあるうちにするもの

2019年06月18日
人事労務は海外経営の基礎

これからの数年間、体力のある日系企業にとっては中国市場を攻める好機です。しかし、思うように受注できず、将来展望が描けないという企業も増えています。日系企業内でも、また同業界内でも、明暗はまだら模様の観があります。

全世界で何十拠点も展開しているような大手企業は別にして、中小企業にとって「潮時」の見極めは非常に重要です。私が中国からの完全撤退(独資一社と合弁一社)をお手伝いした長野の経営者から、片がついた後に言われたことがあります。

「中国進出時に世話になった会社が近くにあるんだけど、実はそこが先月、破産した。中の人に話を聞くと、中国事業の撤退決断が遅れ、さらに撤退時の補償などの負担も過大に膨らんだらしい。で、結局は日本側が持たずに倒産してしまった。銀行も寝耳に水で相当やられたらしい。ウチも他人事じゃない。アンタの話を聞いて見切っていなかったら同じ道を辿っていたかもしれん」

潮時の見極めを誤ると、最悪の場合は日本側も含めて倒産します。挙げた例は日本側の運転資金まで中国で使ってしまったパターンですが、もっと盲点になりやすい問題があります。それは、資金余力がなくなってから撤退しようとすると「増資が必要」になる点です。これでは日本側も厳しくなります。払うものを払えないと夜逃げしかありませんが、これは犯罪であり、高くつきますので選択肢に入れるべきではありません。昔から見切り千両と言われる通り、潮時は大切です。

2019.02 BizChina誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。