コラム

時代変化に適応する駐在員…リーダーの「実力」とは

2019年11月12日
日本流が通用しない時代の組織経営

今回で本コラムは一五〇回を迎えました。年に十二回を十二年ちょっと。私が記憶を飛ばしていなければ、原稿を落としたことは一度もなかったはずです。私が小学校時代、もっとも苦手としていたのが作文と読書感想文でしたから、思えば遠くに来たものです(さらに、受験生時代に一度だけ小論文の添削を受けましたが、返ってきた原稿には「ご説ごもっとも。ただ小論文としてはアウト」とコメントされ、採点不能とありました)。

そんな私がコラムを続けていられるのは、三つのお陰です。まずは「書く材料」。日々お会いしたりメールをいただいたりする皆さんから様々なお話を伺えるので、書く材料に困ったことは本当に一度もありません。それに、不正や問題行為だって、次から次に新手の手口が出現するため、書くことは尽きそうにありません。

次に「ずっとこの場を与えていただいているJIN誌の皆さんと、叱咤激励の納期管理をしている弊社のスタッフたち」。いつも納期ぎりぎりで気を揉ませてすみません。今後もたぶん同じ感じなので、よろしくお願いします……。

そして何より、「本コラムを読んでいただく皆さん」。原稿を書くというのは意外に孤独な作業で、読んでいただいていても、何らかのフィードバックをいただく割合は非常に低いです(これはプロの物書きでも同じだそうです)。だから、書き手としては、どんな受け止め方をしていただいているのか、分かりにくいところや独りよがりなところはないか、そもそも読んでいただいている方はいるのか……など、一人でいろいろなことを考えてしまいます。でも、ときどきお会いした方から「実は、小島さんのことは前々からコラムを読んでよく知っていてね、初めてじゃないのよ」と声をかけていただいたり、お便りで「ぜひバックナンバーも読みたい」などと言っていただいたりすることがあって、これはもの凄く励みになります。だって、わざわざ声をかけていただく方がいるということは、その百倍は読んでいただいている方がいらっしゃるわけですから。

皆さんの関心・応援・支援で続いているコラムですので、これからもよろしくお願いします。

前回、「中国のリーダーは肩書きや血筋があっても実力がなければ認められない。そして、赴任してきた時点で、我々はリーダーとして認められていない」という話をしました。ここで問題になるのは「実力とは何か」です。

リーダーの実力とは食わせてくれる力

中国の歴史を読んでいると、リーダーに求められてきたのは「食わせてくれる力」だなとしみじみ感じます。四方八方を外敵に囲まれた中国で、ついていくリーダーを間違えると、文字通り命取り。家族を皆殺しにされたり、家財をすべて奪われて奴隷として売り飛ばされたりしかねない。だから、「この人についていけば家族を守ってくれる。路頭に迷うことはない」と感じさせてくれるのがリーダーに期待すること=実力でした。現代の会社で言えば、「この人についていけば、いいことがある。ついていくならこの人だ」と思わせる力、ということになります。

このため、最期は部下に殺されてしまった三国志の張飛のように、豪腕でも部下に苛烈で理不尽な振る舞いをしていると、いずれNOを突きつけられリーダーの座から転げ落ちることになりますので、気をつけてください。こういうボスは、稼ぐ力は抜群でも、自分の未来を託せないのです。

 

●駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●相互信頼・尊敬のために
□リーダーの実力を示す

2019.10 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。