コラム

いきなりやるのもジワジワやるのも要注意

2022年06月21日
日本流が通用しない時代の組織経営

天津の気候は四季じゃなくてほとんど二季(夏と冬)ですよね。九月の前半くらいまでは暑いのに、数日くらいで急に寒くなり、十月後半には集中暖房が恋しくなる。私も天津には夏服と冬服しかありません。ただ、だんだん日本の気候も変わってきているのか、今年は同じような感じでした。十月中旬の土曜日、近所の公園に出かけた私の格好は、半袖・半ズボンにサンダル履き。「晴れてたら暑かっただろうから、曇りでちょうどよかった」などと話していました。日曜日の夜、前の晩までのタオルケットを毛布に変えましたが、寒くて我慢できず、夜中に飛び起きて二枚重ねにしました。

仕事小屋も、前週まで「こんな時期でもエアコンが必要っておかしいよね」と天津の社員に笑って話していたのに、週明けには秋の格好では寒すぎて冬服を引っ張り出すことに。十月から十一月のどこかで急に冷え込むのはいつものことですが、暑い→寒いと二日間くらいでここまで極端に振れるのは珍しい。こんな調子が続くと、秋物は処分を待つだけですね……。

さて、この気候の話、本題とちょっと関係があります。今年、私が寒く感じたのは、絶対的な気温の低さというよりも、急激な気温変化に体が適応できなかったからだと思います。仮に同じような変化が一か月くらいかけて起きたら、冬服を着込んでいなかったかもしれません。これ、現地の組織改革においても考えておく必要のあるポイントです。

 

いきなりぶち上げると強い反応を招く

新任者がまだ組織を掌握していないのに、いきなり改革とか新施策をぶち上げると、みんな強い反応を示します。典型的なパターンは大きく二つ。新任者を心理的に下に見ていれば総反発・総スカン。下に見ていなければ殻にこもって様子見。モグラ叩きに例えると、前者は一斉に頭を出してガチャガチャ挑発している状態。後者は穴に入ってシーン(こう書いてイメージすると、なんだか可愛らしくなりますが、実際には笑えないシチュエーションです)。

改革を進めるのであれば、一斉に頭を出して挑発してきた場合、より高く頭を突き上げているモグラから順に、躊躇なく叩いていくしかありません。空振ったり、叩くのをためらったりすると、よりかさにかかって向かってきます。ただ、現実の組織で躊躇なく叩いていくと、業務が止まる・混乱することを覚悟しなければなりません。着任早々に業務を混乱させたり、客先に迷惑をかけたりしたら、なかなか厳しいことになりますよね……。

一方、一斉に頭を引っ込めてしまった場合、しばらく泳がせるしかなくなります。決して心服したわけでも、行いや考えを改めたわけでもないので、この状態で改革を進めようとしても、けっきょく動きません。何度言っても提出しない、やらない、言われたとき・言われたことだけやる。一対多でこういう対応をされると、最後は根負けさせられます。根負けせずがんばって続けると、最後は短任期がアダとなって時間切れ。皆さんが帰任したとたん、穴から頭を出すことになります。

このように、改革のスタート時は、強い反応を招いた時点で失敗してしまうと考えておいた方が無難です。では、何ごともジワジワ進めた方がいいのかというと、そうでもないのが難しいところ。いったん改革を始めてからは、ジワジワやると「改革疲れ」「改革慣れ」を引き起こします。任期のある皆さんにとってもノンビリやっている暇はない。始めたら一気に進めきって完了まで到達するのが成功の要諦です。残った任期は、モグラ叩き自体を打ち止めすることに使いましょう。

さて、本稿でモグラ叩きの労務管理をどう卒業するか書いている傍らで、実はすごい解決策を思いついてしまいました。次回はその話をしましょう。

2021.11 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。