コラム

時代変化に適応する駐在員…直接対話のススメ

2020年10月21日
日本流が通用しない時代の組織経営

5月から毎週オンラインのミニセミナーを実施しているため、皆さんから感想・質問・意見をいただく機会が劇的に増えました。「ん? オンラインでセミナーを開催すると、なぜ参加者の反応が増えるんだ」とお感じになるかもしれません。私も実施するまで想定していませんでした。

例えばこのコラム。2007年に書きはじめてから一度も休まず160回を超えました。この間、読者の方から直接お便りをいただいたことは、たぶん十回もありません(お会いしたら、「実は読んでいる」と仰有っていただく機会は多いです)。

それから毎年実施してきた実地のセミナー。開始前や終了後に多くの方から声をかけていただき、有意義な情報交換や議論ができますが、セミナーへの率直なフィードバックではありません。面と向かっては言いにくいですよね。

それが、オンラインのセミナーだと、毎回二桁のフィードバックをいただきます。「今日は総論っぽくて具体論が少なかった」「思ったより尖っていなかった」など、率直な感想や意見をいただけるのは、匿名性が確保しやすいからでしょう。またチャット機能を使えば、挙手したりマイクを握ったりしなくても質問できるため、同時に複数の方が質問を投げ込んでくれます。誰かの質問に答えていると、それを受けてさらに質問が飛んできたりもします。私としてはリスナーの皆さんと一緒にラジオ番組をつくっているような感覚です。これは飛び込んでみて初めて分かる面白さでした。

そんなオンラインのセミナーで何度もいただいている質問があります。「中国のリモートワークはどんな感じなのか」です。新型コロナ対策におけるIT活用の先進性を目の当たりにしたため、日本よりかなり進んでいるのでは、という前提で質問されていることが多いです。そこで改めて見聞きしている状況から考えると、私の現在のコメントは「ほとんど進んでいないと思います」になります。皆さんの周囲ではどうでしょうか。貴重な十回目?のお便り、お待ちしています(笑)

実情は別にして、中国の老板(ボス)はリモートワークや在宅勤務を進めないだろうな、という理由は思い当たります。一つは、中国の組織はボスがやりやすいように最適化されるから。中国では「ボスがすべてを握り、すべてを決める」のが典型的な組織。ボス優先組織です。ボスにとって楽なのは、常に部下が控えている状態。「おいちょっと」と声をかければ部下が飛んでくる。自分は口以外動かさなくていい。リモートになると、これが格段に面倒になります。もう一つは性悪説の世界だから。ちょっと目を離したらサボったり不正を働いたりするのに、リモートや在宅なんかにしたら一体どうなるんだ、と思っています。実は日本でもリモートワークが進まない企業の真の理由は、このあたりにあるのかもしれませんね。

相互信頼の 関係に至るため、もう一つ強くお勧めしたいのが「直接対話する」ことです。通常、言葉が通じないと、通訳を介したり、日本語や英語が話せる人とだけ話したりします。通訳の方を見て話していたら、皆さんと相手の心理的距離は縮まりません。言葉が分からんからと直接話すことさえなかったら、相互信頼や敬意を抱く関係なんて、あり得ません。「そんなこと言っても言葉が分からんし……」、さてどうしましょう。

駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●相互信頼・尊敬のために
□リーダーの実力を示す
□現場に寄り添う
□一罰百戒を使いこなす
□大義名分に本気を見せる
□直接対話する

2020.09 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。