コラム

時代変化に適応する駐在員…直接対話のススメ5

2021年05月20日
日本流が通用しない時代の組織経営

これを読まれる皆さんは、きっと今年の春節休暇を勤務地で過ごされる予定だと思います。気分転換や息抜きの機会も限られますよね。感染力の強い変異株が今後どうなるか、ワクチンの効果は、冬季を抜けたら変化があるかなど、新型コロナについては予断を許さない状況が続きますが、「ストックデールの逆説」にならい、じっと耐えながら、やれることに集中したいと思います

ストックデールの逆説とは、名著『ビジョナリー・カンパニー 2』に出てくる重要な考え方です。最後は必ず勝つ(克つ)という確信は失ってはいけない。だが、この確信と、自分が置かれている現実の中でもっとも厳しい事実を直視する規律を混同してはいけない。言葉を換えると、安易な楽観視はいけない(実現しなかったとき失望に変わるから)。ただ、悲観もしない(悲観して諦めた時点で可能性も消してしまう)。私は自分を「現実主義的楽観主義者」だと思っていますので、このストックデールの逆説は、読んだとき、ごく自然に腹落ちしました。

新型コロナの社会的影響は、私の想定を次々に破りました。最初は半年(東京オリンピックは大丈夫か)、長くて一年(旅行・観光業界の皆さんは一年分のキャッシュ確保を)だと思っていました。でも、感染抑制→政府の規制緩和→相互往来の再起動→フライトの回復……という道のりを考えると、まだ各国とも一つ目に苦慮している段階。以前のような感じで出張や旅行の行き来ができるようになるのにどれくらいの期間を要するのか、いまの私には見当もつきません。現状がずっと続くかもしれないという前提で、回復を待たず、自分のミッションやライフワークを追求していきたいと思います。

今年の春節は、たぶんいままでとは違う静かさがあるのではないかと予想します。まったくの想像ですが、少し日本の年越しに似た感じさえあるかもしれません。静かさには静かさのよさもあります。現地の皆さん、どうか佳い年をお迎えください。

 

さて本編に戻ります。直接対話を勧めていて、日本人にしか使えない武器として「筆談」を紹介しました。漢字・数字・アルファベットを駆使すれば、相当の情報量があります。「漢字」「数字」「相当」「直接」「武器」など、簡体字でなくても、ほぼそのまま伝わるはずです。図だって使えます。これ、漢字が読めない言語圏の皆さんにとっては、無茶苦茶高いハードルだと思います。アルファベットだと最多画数でも四画。「数」とか「最」とかどんな図形だと。でも、日本人から見れば、簡体字の方が画数が少なくて簡単なくらい。

一方、中国語の発音は日本人にとってハードルが高い。四声でつまずきますし、「r」や「e」も鬼門。日本人にとって「りーべんれん」が最大の挫折ポイントという笑えない事態が待っています。

限られた任期ですから、ハードルの高い口語から挑戦するより、すぐ始められる筆談を優先した方が得策。筆談に必要なのは白板や紙とペンのみで、どこでも入手可能なのも便利。

ただ、最近はこれさえ不要になりつつあります。微信(ウィーチャット)の自動翻訳機能です。万全ではないものの、かなり優秀。かつ、ほぼ全従業員が(街で出会うほぼすべての人が)微信を使っている。これを使えば直接対話できない相手などいないといっても過言ではありません。

駐在員が求められる役割を発揮するために必要なこと
①脱落しない
②バカにされない
③親近感を持たれる
④信頼・尊敬される
⑤後任者にしっかりつなぐ

●相互信頼・尊敬のために
□リーダーの実力を示す
□現場に寄り添う
□一罰百戒を使いこなす
□大義名分に本気を見せる
□直接対話する

2021.02 Jin誌

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。