コラム

ちょっと横道…家電が壊れて考えた日本の未来

2023年01月15日
日本流が通用しない時代の組織経営

最近、実家のセラミックヒーターが突然、動かなくなりました。説明書でエラー表示の内容を見ると、「その他の故障=サポートに連絡してください」とある。私が買ったもので、まだ五年経っていません。日本の大手ブランドだし、繊細な家電じゃないし、十年は放っておいても使える感覚でいたので、正直想定外でした。

このまま捨てるのもエコじゃない。修理の概算見積を取って判断することにしました。ネットで検索すると、メーカーのWebサイトに概算見積を検索できる機能がある。さすが大手、気が利いているなとページを開いて製品番号を打ち込んだら、反応しない。何度か試してダメなので、他の製品を適当に試してみたら、どれも応答しない。ブラウザの問題かなと他のソフトに切り換えてもやっぱりダメ。仕方がないので説明書にあったサポート窓口に電話。自動応答が選択肢を提示するので選んで次へ。また次へ。何度か選んで進むと、自分の相談に該当する選択肢がない。よくある「その他のお問い合わせについては9を」みたいな逃げ道もない。

どこかで聞き漏らしたかなと、最初に戻って聞き直すものの、やっぱり選択肢がない。このあたりでもうかなりイライラしています(笑)。どうしようもないので、最後の選択肢まで進んで適当な番号を押す。ここからつながるまでがまた長い。ようやくつながったので趣旨を伝えると、「ここではないので、こっちの番号に掛け直してくれ」とのこと。毎回こういう局面で素人としては「そっちで繋いでよ」と思う。うんざりした気分を引きずりながらも、また電話を掛ける。この日、最後に出てくれた若い男性は、ここまでの怒りを溶かすくらい親切で丁寧でした(過剰な丁寧でも、妙なハイテンションでもない、ちょうど心地いい対応ってありますよね!)。

ひと段落してから思ったのは、「あぁこれ、日本企業の縮図だな」ということ。現場では一生懸命いい仕事をする人たちがいる。でも、仕組みやサービス全体の品質管理に問題がある。現場の劣化ではなく中枢部の劣化。若い人たちの問題ではなく、責任権限を持つ年配者の問題。先ほどの担当者みたいな若い人は、私のようにそこに至るまでの一連の体験に腹を立てている客を相手にしていたら、すり減ると思います(あ、私はここまでのイライラをぶつけたりしていませんよ。出だしは不機嫌そうな声だったと思いますが……)。素敵な顧客サービスができる優秀な人材に敗戦処理みたいな仕事をさせていたら、そりゃ会社の活力は落ちていくだろうなと感じてしまいました。

この話、オチは日本企業の問題指摘じゃありません。若い人たちがいい仕事をしているなら未来は明るい。彼らが伸び伸びいい仕事をする環境をつくった会社の未来も明るい。敗戦処理・負債処理は経営者・ベテランが引き取って、若い人に創造的な仕事をしてもらいましょうよ、という結論です。

この記事を書いた人

小島 庄司Shoji Kojima

多文化混成組織の支援家、Dao and Crew 船長。
事業環境のシビアさでは「世界最高峰」と言われる中国で、日系企業のリスク管理や解決困難な問題対応を 15 年以上手がけ、現地で「野戦病院」「駆け込み寺」と称される。国籍・言葉・個性のバラバラなメンバーが集まるチームは強いし楽しい!を国内外で伝える日々。